大学生起業家。いわゆる「意識の高い」、遠い世界にいる人種ではない。塾生の中にも、起業で成功している人物がいる。現在SFCで学びながら、株式会社ディグナの代表取締役を務める梅崎健理さん(総1)だ。梅崎さんは、高校在学中の2010年にTwitterで使う「~なう」という言葉で新語・流行語大賞を受賞、17歳の時にディグナを設立した。「在学中に、大学の仲間や教授と一緒にまた新たな会社を作りたい」と今後の抱負を語る。
失敗を恐れず若さ武器に
「大学での4年間は、社会に出るまでの執行猶予みたいなもの。いくらでも失敗できる学生のうちに、起業した方が良い」。学生企業は、企業として法人になっているため学生だからという理由で守られることもなく、大企業のように多大な利益も見込めない。デメリットも大きいだろう。それでも学生が起業する意味はどこにあるのか。「無理に起業する必要はないけれど、もし起業するなら、社会に注目してもらえる若くて早いうちにすべきだと思う。起業には様々なエッセンスがあるから、就職にも有利」。社会人に比べて背負うものがない大学生だからこそ、大きなことにも挑戦できる。
仕事も学生目線で
株式会社ディグナは、ソーシャルメディアを活用した一般企業向けのマーケティングや、キャンペーンのコンサルティングを行っている。最近では、脱毛サロン・脱毛ラボの『脱毛娘。』の広告を手がけた。その他にも、ウェブサイトやアプリの制作、チャットを使った企業向けシステムの提供を行うなど、精力的に活動している。
企業を運営していくにあたって、梅崎さんは学生ならではの視点で取り組んでいる。デジタルネイティヴ世代として、物心ついた時からネットを知っている人と知らない人の間を取り持つ、パイプ役となることを目指している。「キャラクターで注目されるだけの学生起業家では、長続きはしない。一度注目された後に試されるのは、商品やサービスだ」
日本一の環境で学ぶ
一方で、起業家としての大学生活はどのようなものなのだろうか。梅崎さんは法学などビジネスに関係のある授業に加え、体育の授業なども楽しんでいるという。SFCでは全学年が同じ授業を選択でき、自分の興味関心に沿った分野をくまなく学ぶことができる。「社会経験の豊富な教授も多く、起業したい人には日本一の大学」と話す。仕事と学業の両立も問題なさそうだ。
しかし、梅崎さんは学生起業家には「休学」を勧める。都心から離れたSFCのキャンパスに閉じこもらずに外に出て、たくさんの人に出会って感化され、外部の世界に触れて刺激を受けることができる。
入学の先を見据えて
梅崎さんが、後輩となる受験生へ送る言葉とは。「大学に入ると、必ず初心の念を忘れます。そして惰性で就職を決めると、残りの人生を棒にふることになる。慶應に通えるということは、社会の中でもエリートといって過言ではない。間違っても自分は守られていると錯覚してはいけません。これからの日本の中で、どうやってサバイブしていくか、真剣に考えてほしい」
大学に入学することは、決してゴールではない。大切なのは、その先で与えられた環境をどう活用するかである。それが、成功の鍵だ。
(井上晴賀)