12月のインカレをもって、2015年度の大学サッカーシーズンは終わりを迎えた。そこで、慶大ソッカー部の2015年を振り返りたい。
前半戦は縦への速い攻撃を軸とした新戦術が功を奏した。MF端山(総4)という中盤の核に加え、攻撃のリズムに変化を加えられる存在として台頭したMF手塚(環2)らフレッシュな戦力がうまくかみ合い、前年度の大きな課題であった攻撃の迫力不足は、ある程度改善された。
しかしその一方で、縦への速攻とセットであるはずの堅守はいまひとつ機能しなかった。複数失点は専大戦のみと大崩れすることはなかったが、同時にクリーンシート(無失点)も1試合のみであり、可もなく不可もない守備力に終始した。
リーグ前半戦を終えた時点で首位国士舘大から勝ち点3差の5位とまずまずながら、引き分けが先行し下位相手の勝ち点取りこぼしも目立った。アミノバイタル杯でも1回戦敗退に終わるなど、期待と不安の両方を抱かせる前半戦となった。
8月末には、さらなる成熟を目指していた慶大に大きなニュースが飛び込んできた。端山がJ1アルビレックス新潟への入団内定と同時に特別指定選手となり、大学の試合から遠ざかることになったのである。慶大からプロへ羽ばたく選手が出ることは喜ばしいが、チームにとっては戦力的に痛恨の離脱でもあり、まさに痛し痒しであった。
予想以上の不安を抱えながら迎えることになった後半戦だが、端山の不在がかえって選手たちの気持ち強くしたのか、慶大は9月を4勝1分と絶好調で終え、国士舘大と早大に並び首位に立った。3得点が4試合に、無失点が3試合と、前半戦の課題を吹き飛ばしたかのような内容もあって、優勝への期待は一段と膨らんだ。
ところがその後、早慶首位決戦であまりにも大きな敗北を喫してしまい、最終的にリーグ戦を3位で終えた。端山の抜けた穴を奮迅の活躍で埋めたMF山田(総4)や、前期からプレーにさらに磨きをかけて敵陣を脅かし続けたMF手塚、ゴールの固め打ちを重ねたFW山本(政3)と多くの選手がステップアップを果たしたものの、調子の波は改善しきれず、安定感を発揮した早大との差が出てしまった。
リーグ終盤に勢いを挫かれた形で臨んだインカレでは、攻撃陣が鳴かず飛ばず。大阪体育大学を相手に初戦敗退を喫し、2015年のシーズンは歓喜と失望の入り混じるまま終戦した。
来たる新シーズンに向けて、MF手塚を筆頭にMF渡辺夏(総2)やFW田中健(法2)らのさらなる成長と、フロック(まぐれ)で終わらないMF松木(総1)やMF小谷(環1)の活躍は必須だ。加えてチーム作りの第一歩であるGKのポジションでは、コンスタントにベンチ入りしてきた田野(経2)にも期待がかかる。戦術的には速攻が現チームに最もフィットしているが、一方で前期に見られた守備力や安定感の欠如という課題が根強く残っていたのも事実。須田監督と選手たちが、「単なる速攻」から9月に見せたような「堅守速攻」の域までチームのスタイルを完成させていけるかが、悲願のタイトルへの条件と言えるだろう。(辰巳龍)