私たちは、「生まれた時からアルデンテ」。平成生まれに、そんな格好いい呼び方をつけてしまう。独特のリズムと感性で紡がれる食エッセイは多くの人を魅了し、今では雑誌の連載からレギュラーのテレビ番組まで持つ人気者だ。
「生粋のごはん狂」といわれるように、食への関心は昔から強い。「鉄道が大好きな子供がいるように、私は食べることに関心が強かった。小学生の時に食日記を始めて、給食やレストランの感想を残していました」
小学校5年生から続ける食ブログを発見したアートデザイナーに声をかけられ、雑誌での執筆が始まった。書き溜めたブログは、卒業と同時に書籍化されている。
食への思い
在学時代の食事情は、学生にしては贅沢なものも多かったようだ。「渋谷のデパ地下で気になる惣菜を買うのが楽しみのひとつでした。昼からバゲットにパテを塗ったりして、生意気なもの食べてましたね(笑)」。
値段やカロリー、栄養成分など、食べる物を選ぶには様々な基準があるだろう。しかし「栄養を入れるためだけに食べても、心は痩せてしまう」という。
「例えば味噌カツ丼があったとして、カツ3切れに対して1切れにだけ味噌がテキトーにかかっているのは、だめだと思います。そこには『この一皿を美味しく食べてね』という気持ちがこもってないでしょ」
平成らしさも愛す
忙しい現代人は、昭和に立ち返って落ち着きを求める。最近はレトロな喫茶店もブームだ。個人店には、どこでも同一のサービスを提供するチェーン店と比べ個性や温かみがある。「でも、喫茶文化に育っていない世代にとって喫茶店は新鮮なもので、すべてに感心してしまう。チェーン店だと何にも関心を持つことも、持たれることもない。ただいるだけでも許される、その空間で私たちはちゃんと癒されているのでは」と評価する。
同じ一皿を前にしても普通は気づかない程度の小さなことが、彼女の繊細な感性にはひっかかる。それが文字となり、読み手をハッとさせる。その洞察力は、愛する「食」への熱意からくるのだろう。
学生時代は自分の好きなものに集中できるチャンスだ。「大学生には時間があるといっても、飲み会やバイトで手帳が埋まっている人は多いですよね。でも予定のない空白の時間こそ、学生だけの宝です。私は散歩が好きだったので意図的に暇を作って散歩しました。何かを削っても好きなものに注ぐ時間は大事にした方がいいと思います」と助言をくれた。
新たに目を向けるのは科学分野だ。「これまで書いたエッセイは、あくまで私の主観から出来たもの。もっと客観的に『美味しい』とは何かを掘り下げたい。実は大学院も選択肢の一つです」。これからも好きなものと向き合い、「味わう」姿勢は変わらない。
(上山理紗子)