1月2日・vs横河電機 ○ 123−103
1月2日、午前11時20分。千駄ヶ谷駅は、大勢の人で溢れていた。周辺に、初詣の出来そうな神社は無い。
群衆の大体半分は、国立競技場のラグビー大学選手権準決勝が目当てのようで、オレンジと青色の横縞の入った法大のユニフォームを来たファンの姿が見えた。慶大蹴球部は既に1回戦で帝京大に敗れている。黒黄(こっこう)のシャツを身にまとった人物はいないのが、少し寂しい。
一方の半分の足は、東京体育館に向かっていた。年末まではバスケットにかける全国の高校生の猛者(もさ)が、ここで凌ぎを削っていた。高校生最後のタイトルである選抜大会、いわゆるウインターカップである。今回も京都の洛南が優勝し、96〜98年の能代工業以来の3連覇を達成したわけだが、年が明けるとすぐ、舞台は全日本総合選手権(通称・オールジャパン)として、JBL、大学、社会人などから選び抜かれた男女各32チームが日本一をかけて争う舞台となる。
その中で、大学生の表情には、どこか陰りが見える。「優勝」をスローガンにしては見るものの、実力のあるJBLのチーム相手にはどうしても及ばない絶対的な差がある。2年前に慶大が日立が勝った話題は、この企画で何度か言及しているが、この時は大学4年生に逸材が揃い、JBLチームは外国人を出場させることが出来ないという事情があった。今はどのチームでも外国人を1人だけコートに立たせることが出来るようになったため、アップセットの可能性は限りなく低くなった。それゆえ、どのチームもどこかに気持ちの「折れた」部分を抱えているのだ。
学生1位である慶大のこの日の相手は、社会人1位の横河電機。今年、実業団のタイトルを総なめにし、まさに「社会人最強」と呼ぶに相応しいチームだ。結果は勝利だったが、慶大は手こずった。点差が拮抗しているとディフェンスは堅くなり、オフェンスではしっかりと持ち味のトランジションを見せる。が、点差が離れると、気が抜けるのか相手に簡単にシュートを許し、決められてしまう。3Q途中に点差が約30点となったが、その後徐々に詰められ試合時間残り2分で13点差になった時は、鈴木はさすがに慌てたようだ。最後は大学チャンピオンの貫禄を見せて20点差をつけたが、消化不良の感が残る展開だった。
この試合に関しては、慶大は「折れて」いた印象がある。失点が3ケタになったことが、その印象を生み出している。インカレを戦っていた当時のチームだったら、ダブルスコアの差はついていたのではないか。だが、インカレを制し、一応の終着点にたどり着いたこのチームは、実は佐々木HC曰く「折れてはいない」という。本気で打倒JBLを狙っている。
「今年は#4鈴木が折れないで頑張ってきたというのが大きいと思う。今でもそうなんですよ。折れていない。だから、もしかしたら三菱に勝つかもしれない。志村の時(04年度チーム。オールジャパンは2回戦で三菱電機に敗戦)は、もう4年生は(モチベーションが上がらずに)終わってたよ、この時期は。ところが鈴木はまだ終わってない。練習もやっていることもきちっと芯が通ってるし、だから、三菱が本当に調子が悪ければこの子達も勝てる可能性は大分高いです。それは#4鈴木の力だと思うけどね」
正直、三菱電機というチームについてはあまりイメージが湧かない。知っている選手と言えば、かつて青学大に在籍していた佐藤託矢(05年度卒業、06年三菱電機入社)くらいである。現在JBLでは下位に甘んじている。だからと言って、そう易々と勝利させてくれるわけが無い。その中で、外国人を抱えるチームに対するポイントはやはり、インサイドだ。
「インサイドの外国人をどうやって抑えるか。一応きちっとした勝負をしなきゃいけないと思っているけど、04年にやった時は外人が2人いて、松島(松島ウォルターブラウン)?あいつが本気で公輔にかかってきたんで、ちょっと公輔がファールトラブルになっちゃったんだけど、今回はそういうことは僕の頭にはいっているから、そこら辺は#7岩下に頑張らせようかな、とは思ってます」(佐々木HC)
「ポイントはリバウンドかな。うちはそんなに大きいチームじゃないんで、3、4、5番ポジションのところで相当取られちゃうと思うんで。出来るだけゴール下でイージーなシュートをさせない。それを決められちゃうと厳しいから、岩下とか大祐が頑張って競り合って、僕や二ノが飛び込んでリバウンドを確保するのと、それとプラスしてトランジションをしていければ、うまくいけるかなとは思うんだけど、それは精神的にも肉体的にもかなりつらいと思うから、それをいかに40分継続出来るか」(#4鈴木)
これが最後の戦いとなるか、それともベスト8に入って2年前の再現がなるのか。はっきり言って前者の方が可能性は高い。だが、本当にまだチームが終わっていないのだとしたら……。これは、淡い期待で終わって欲しくない。
文・写真 羽原隆森
取材 羽原隆森、阪本梨紗子