慶大総合政策学部を卒業し、現在も政策・メディア研究科に通う傍らモデルやエシカルファッションプランナーとしても活躍する。目標は「重要かつ複雑なテーマにアクセスできる人を増やす」こと。人生の中で、学ぶことにこだわり続ける鎌田安里紗さんが、大学で学ぶ意義を語る。
「1年生の時に受けたパターン・ランゲージという授業に衝撃が走り、もっと深めたいという思いで、今所属している研究室に入りました」
パターン・ランゲージとは「暗黙知を言語化し、活用する手法」。個人の中に閉じてしまいがちな経験値や実践知を主にインタビューで引き出し、その事例の背後にある原理原則を発見し、誰もがわかる形で言語化して共有するのだという。
学部生時代は若い女の子達が「自分の価値観を認識し、それに基づいた判断をする」ための研究をしていた。モデルという立場は、同世代の女の子からの相談を受けることが多い。そこでいきいきと生きる人々が持つ発想の原理原則を言語化・共有することで力になれればと考えたという。
修士課程に入った今は、「持続可能な社会を実現するために人々はどのように発想・行動するべきか」というテーマのパターン・ランゲージをつくる研究をしている。学部時代の研究とは一見かけ離れて見えるが、「人は自分に満足して初めて人や社会、地球に目が向けられるもの。だから学部生時代の研究は今の研究の土台になっています」と話す。
今メインで行っている活動は「人と地球に優しいファッション」と言われる「エシカルファッション」の認知度向上だ。価格や着心地といった目先だけの服の価値ではなく、服の制作過程の裏側に潜む低賃金労働の問題、また服の大量消費によって生じるゴミ問題といった過去現在未来全てのストーリーを含めて服を買うことを提案している。
「エシカルファッションはモデルとしての立場から発信するひとつのトピックにすぎません。最終的に伝えたいのは、その裏側にある持続可能な社会を作ろうという思想の部分です。それは簡単に言葉にできることではないので、パターン・ランゲージを用いて言語化しないと伝えられないと思います。だから大学での勉強はこの活動において大きな意味を持っています」と述べた。
最後に、今勉強している全ての学生に向けてメッセージを頂いた。「大学に入ったら様々な授業を受けて、自分がどのようなことに興味を持つのかを考えてほしい。私もその過程でパターン・ランゲージに出会いました。多くの刺激に敏感になって、自分で考えて勉強すれば、すごく成長する4年間になると思います」
(小宮山裕子)