医学部を卒業したのち、病院勤務の傍らで慶大通信教育課程の文学部、法学部にて学んだ。現在も医師でありながら弁護士、政治家をかけ持ち、慶應義塾大学で教授としても活躍している古川氏にその華麗なる経歴についてお話を伺った。
「目の前の患者さんをどうやって治していくか。自分のできることは何かと探っていくうちに、こうなったという感じかな」
古川氏が初めに選んだのは、医学部だ。医者として患者に接していくなかで、癌の告知やインフォームドコンセント、臓器移植といった医と法と倫理の3つが絡み合う問題に直面したという。3つの立場がぶつかりあうのをみて「相手方の立場になってものを言えるようにならなければいけない」と感じたことが文学部で社会学を、法学部で法律学を学ぶきっかけとなった。
文学部で哲学について学び、法学部を卒業し弁護士資格を得て戻った医学界では医療事故が問題となっていた。事故を防ぐには医療制度の整備だけではなく、病院経営を改善する必要があると感じた彼はオックスフォード大学に留学し経済学を学んだ。
しかし今度は、経済を学んでも医療に対する財源を得られなければ意味がない。財源確保を行うのは、財務省、医療行政を担当するのは厚労省だ。省庁に直接働きかけようと、政治家となった。慶大は互いを認め合うことができ、自由に考えさせてくれる場所であった。そうした環境の中では医学部のつながりだけではなく他学部とのつながりももつことができた。人間関係の結びつきの強さは慶大だからこそ得られたものである。
座右の銘は福澤諭吉先生の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり」。古川氏は「置かれた立場でベストを尽くしていくことが人間の生きる意義であって、そこに優劣はない」と述べた。
大事なことは、自分のやりたいことをはっきり持ち、それに向けて短期的な目標を立てて行動していくことだ。「人生は一度きり。悔いのない活動をしていきたい」と語った。
そんな彼の塾生時代は「よく学び、よく遊び、よくスポーツをしたという6年間」だった。塾生時代の一番の思い出である慶大医学部体育会ゴルフ部では2年連続で全国優勝をしたという功績も残している。
最後に塾生へのメッセージを頂いた。「若い情熱を原動力に、学生時代にしかできないことに打ち込んで欲しい。今ある自分の立場を大切にして自分のやりたいことに全力を尽くしてください」
(戸根裕莉子)