過去、今、そして未来
今月24日、「日韓学生フォーラム」の1年間の活動の報告会が国立オリンピック記念青少年総合センターにて開かれる。
「日韓学生フォーラム」とは、韓国の「韓日学生フォーラム」と共催で日韓の大学生が討論、交流を行い、二国間で未来志向の関係を築くことを目的とするプログラムだ。政治、文化などのテーマから選択して個人で発表を行う分科会と、戦争と平和、観光などのテーマから選択して日韓の学生が合同で発表するシンポジウムが活動の中心となっている。研究会で東アジアにおける日韓の役割を学んでおり、フォーラムに参加した金子朝希さん(政3)がこれまでの活動を振り返った。
今年度は新たな取り組みとして、「日米学生会議」との合同レセプションを開催した。佐世保基地では、近年のアメリカが日本、韓国との同盟関係を重視していることを聞いた。「中国の台頭などを念頭に置き、三カ国で海のパトロールを行うことが重要ということを学べた」と語った。
未来志向を掲げながらも、歴史と真摯に向き合う姿勢も忘れない。韓国人学生と共に長崎原爆資料館を訪れた。「ある韓国人学生が、『日本は加害国だと思っていたが、被害国でもあるのだな』と言ったのが印象的だった」という。また、太平洋戦争時より代々日本に住む韓国人から、祖国の文化の継承に努めているという話を聞く機会もあった。
金子さんが所属した政治分科会では、各国で共通の問題として、権力の腐敗を見出した。また、韓国の問題としては「もともとデモが多いが、最近は様々な団体が自己利益のために起こしている。その点で逆に民主主義から遠ざかっているかもしれない」と感じた。
メインフォーラムでは、日韓の学生が2週間寝食を共にする。その中では「互いの共通点、相違点を発見できるのが面白かった」という。たとえば「韓国の学校教育は大学受験合格のために、受験科目だけを学ぶ場。芸術の授業や部活の話をすると羨ましそうだった」。これは、大企業に就職しないと将来の生活が成り立たないという厳しい現実と関連する。
金子さんが一人の韓国人学生に韓国料理が辛い理由を尋ねたところ、辛味でストレスを発散しているとの答えが返ってきたという。たしかに宮廷料理には辛い料理が少なく、競争社会が生まれた近現代の韓国料理は圧倒的に辛い。
価値観の違いが原因で衝突したこともある。レセプションでアメリカ大使館の職員が行う挨拶の原稿に「日韓学生フォーラムの皆様」という表現があった。これに対して「韓日学生フォーラム」の学生が嫌悪感を示したため、改めて両団体の名称が呼ばれた。このことには、韓国人学生のアイデンティティの強さを感じたという。
未来志向の日韓関係について、「歴史問題で思考停止せず、共有できる分野を積極的に探して協力すべき」と話した。韓国に対する思い入れが増したことは、今後の勉強のモチベーションにも繋がったという。
24日の報告会にあわせて次年度の参加者の募集も開始する予定だ。「日韓関係、韓国文化に興味のある人、国際交流そのものに関心がある人など様々な学生に来てほしい」
(成田沙季)
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