「パソコンは立って操作すると、目にも良い距離感を保てる」と実演する坪田教授
「パソコンは立って操作すると、目にも良い距離感を保てる」と実演する坪田教授
大学生の必需品となっている、スマートフォン。頻繁に使用していると視力が低下するだけでなく、年齢にかかわらず老眼にもなる?近年増加している「スマホ老眼」とも呼ばれるこの症状について、慶大医学部眼科学教室の坪田一男教授にお話を伺った。






まず、スマホは特に顔に近づけて凝視することが多く、それにより目のピント調節のための筋肉が凝り固まってピント調節機能が働かなくなり、視界がぼやけてしまう。「スマホ老眼」は、いわば「仮性近視」のような状態だという。

そしてもうひとつ、視力の低下を引き起こす要因がドライアイだ。スマートフォンを使うときは瞬きの回数が減る。すると涙の量も減り、目の表面はでこぼこになる。それにより不快感や目の疲れ、見えにくさが生じてしまう。

近年耳にするようになったブルーライトも、視力低下の要因である。青い光は赤い光よりも乱反射しやすいため、ちらつきが起きやすいため、眼精疲労を招きやすい。

「スマホ老眼」にならないための対策についても伺った。座る場合、姿勢は「プローンポジション」という脱力した状態が良い。とはいえ寝ながらの使用はスマートフォンとの距離が近くなるため避けるべきで、「本当は立って使用するのが一番」だという。高いテーブルの上にパソコンを置いて作業する様子を見せてくれた。目の健康には全身運動も大切だ。

時間の目安としては、一日4時間以内。一時間に一回は休憩を入れる。時間帯は夜間よりも昼間の使用が好ましい。「夜に目にブルーライトを入れると睡眠の質を下げ、記憶力も悪くなる。さらに、太りやすい体質にもなってしまう」とも指摘した。

「スマホ老眼」は予防することも出来る。坪田教授は二種類のメガネを紹介してくれた。一つ目は、ブルーライトをカットするメガネだ。二つ目は、両サイドに水タンクがついているメガネで、目の保湿効果があり、主にドライアイ予防として有効だという。

今の大学生にとってスマートフォンは欠かせないが、それに生活を振り回されては本末転倒だ。「スマホの使い方は賢く。自動車に乗りすぎて運動不足になるのと同じ。生活するためには必要だが、スマホも道具なので、使い方を誤ると健康ハザードに陥ってしまう。」便利なものであふれる時代だからこそ、使う側にも工夫が求められている。
(原科有里)


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