「せっかく三田に住んでいるのに、週一で来日していて電車賃がもったいないです。どうしたらいいですか?」(法3男)

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「歩けよ!」と満場一致の所員たち。日吉から三田の直線距離は15㌔だ。「じゃあ明日やってみよーぜ!」と意気込む所員H(経2男)に「行ってらっしゃい」と他の所員は声をそろえる。「明日は全休だし、一人でもやってやんよ!」と吠え、Hは事務所を飛び出した。

翌日、やっぱり一人で歩くのが嫌になり、友人のN氏に協力を依頼。ラーメン二郎でエネルギーチャージした後、慶大正門前から「川崎まで15キロ」の看板を頼りに国道1号線を歩き始めた。時刻は12時。Nには5限の授業があるため、そこがタイムリミットだ。

「地図など無くても帰巣本能で日吉に帰れるわぁ!」と鼻息の荒いHは地図も持たずに足早に進む。しかし、国道の上では特にハプニングもなく、景色も変わらない。「川崎まであと○キロ」で歩いた道のりを確認するだけの、予想外に退屈な旅にHは段々元気をなくしてしまう。

五反田駅を過ぎたあたりから、更なる悲劇がHを襲う。Nが寺や神社を見つけるたびにいちいち立ち止まるようになってしまったのだ。土地の歴史や文化財の説明をじっくり読むNに、Hはさらに苛立つ。スマホのお天気アプリを見ると、気温は31度。「頼むから早く行こう」と急かすが、Nは「心を落ち着けて、お前も読め」と悟りを開いたかのように穏やかな顔である。

スローペースながらも歩き続けて2時間程すると、ようやく大田区に突入した。「そろそろ多摩川かな?」とHが元気を取り戻したところに「池上本門寺この先」の看板が。結局、二人で参拝した上境内でかき氷まで食べ満喫した。「飽きたからもう国道はやめよう」ということで、闇雲に市街を歩き始める。30分ほどさまようと「川崎まであと8キロ」と見慣れた看板が。国道1号線の呪縛からは逃れられないようだ。

多摩川まで辿り着くと感動もひとしおで、無駄に写真を撮り合う二人。橋の上から武蔵小杉のタワーマンションを発見し、テンションは最高潮に達する。しかしそんなことをしている間に既に4時。あと30分で5限が始まってしまう。

タワーマンションの方角に走り、鹿島田駅、新川崎駅を通過したところでようやく日吉方面の看板を発見。本能のままダッシュし蝮谷に到着するが、日吉キャンパスが建つのは台地の上だ。とどめのような長い階段を前に、Hは脱落。Nはダッシュで5限に向かうのだった…。その晩二人はぐっすり眠れたそうな。
(アシパン)