選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が先月19日、公布された。施行後初めて公示される国政選挙から適用されるため、来年夏の参院選から新有権者が誕生する見通しだ。主権者教育をどのように施していくかなど課題も多い中、選挙権が18歳以上に引き下げられることで、若者の投票行動にどのような変化が起こるか注目される。
選挙権年齢が引き下がるのは1945年以来70年ぶりだ。新たに選挙権を得る18、19歳は約240万人で有権者のおよそ2%にあたる。
昨年6月には、国民投票ができる年齢を「2018年に18歳以上」とした改正国民投票法が成立しており、今回の選挙権年齢引き下げはこれを受けた措置となる。しかし、ローン契約締結などの民法上の権利や飲酒、喫煙といったその他の法令上の権利が獲得できる年齢に関しては従来のままだ。
慶大法学部の小林良彰教授は「18歳で就労し納税をしている人がいるのに、彼らに選挙権を与えないのは説明が付かない」と今回の改正について支持。アメリカ独立戦争で「代表なくして課税なし」というスローガンが掲げられたことを例に「自ら代表(代議士)を選出することができない状態で課税を求めることは不当である」と述べ、「課税の義務の前提として選挙権があることが民主主義の原点である」と指摘した。
選挙権年齢の引き下げを受け、各政党が若年層の意向も反映させるような政策をとることが予想される。少子高齢化が進行する現代社会では今後、総有権者数に占める高齢者の比率が増加し、高齢者を優遇するあまり将来世代への負担が軽視されかねない。そのため、選挙権の拡大により「若い世代を敵に回すと選挙戦で不利になるかもしれないという心理が、各政党で働くようになるだろう」との見方を示した。
また今回の改正は、「現時点で選挙権を有している若年層の投票意欲を向上させることにも繋がるのではないか」と小林教授は分析する。「これまでは若者の有権者が少ないことから、自分が投票しても政治に十分な影響を与えられないだろうという意識があったかもしれない」とした上で、「有権者の増加に伴い、自分たちの意見が反映されやすくなるかもしれないという期待が持て、これが若者の選挙への参加意識を高めるのではないか」と述べた。
高校3年生でも投票が可能になるため、未来の政治の担い手に対する主権者教育が学校などで必要となってくる。近年、主権者意識を育むために模擬投票を行う高校も現れているが、これについては「戦前の反省から政治教育はするべきではないが、選挙の意味や実態を高校生たちに理解してもらうことは不可欠だ」と語った。
18、19歳の新有権者が最初に参加する公算が大きい来年の夏の参院選については、「全体の投票率の変化よりも、若者の投票率や投票総数に占める割合がどう変化するかが問題となる」と述べ、投票結果だけでなく若者の投票行動にも注目する必要性を強調した。