先月1日からミラノ国際博覧会が開催されている。テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」だ。現地の様子、そして未来の食糧事情について、加藤辰也政府代表にお話をうかがった。
武器になる技術
昨今は人口爆発や気候変動、それに伴う農業への影響など、食にまつわる地球規模の課題が激増している。これに対し日本は、最先端の技術開発による解決策を提示することができるという。
例えば、大半が食肉生産用に利用される大豆を良質な植物性たんぱく質として活用すれば、より多くの人口を支えることができる。また、気候変動に適応するための品種開発や、衛星技術により干ばつの時期などを予測することで、被害を未然に低減させることも可能である。
さらに、日本の農業技術や協同組合システムなどの知識は、途上国の小規模農家の育成にも役立つ。日本の技術は世界の武器になりうるのだ。
特有の食文化
技術に限らず、日本の食のあり方や精神も注目を集めている。近年特に和食が世界的に人気になっているが、具体的にどのような点に目を向けられているのだろうか。
日本の食には、一汁三菜を基本に多くの食材をバランスよく取り入れるスタイルがある。また、うまみ成分を活用して脂肪や糖分を抑えつつも味覚の満足感を与える出汁や、発酵や天日干しで栄養価や保存期間を高める伝統的技術が存在する。これらは生産と消費を有機的につないでいる。
他国の食文化を柔軟に取り入れてきた点も、忘れてはならない。和食以外でも洋食、中華などバラエティ豊かな食が一国内で浸透しているのは、世界的に見ても際立った性質といえる。
食卓で声に出す何気ない言葉の中にも、大切なポイントが隠れている。「いただきます」「ごちそうさま」という表現は命をいただく、という食への感謝の意が含まれている。また「もったいない」という言葉に見られるように、無駄な消費を抑える向きも強い。
このような日本の伝統的な精神を世界に発信することも、未来の食を救うことにつながると期待されている。
発信するメッセージ
日本は「Harmonious Diversity(共存する多様性)」を出展テーマに掲げている。日本食文化に詰め込まれた多様な知恵と技を紹介することにより、地球規模の課題への貢献可能性についてメッセージを発信するのだ。
食糧そのものだけでなく、農林水産業に関する取り組みや、食卓を彩る食器などの伝統工芸品も紹介する。アートやアニメなど近年話題の「クールジャパン」のコンテンツも盛り込むことで、日本の魅力をアピールする。
繋がる食の世界
開幕から約1ヶ月が経過した。会場運営も徐々に落ち着きを見せ、連日多くの人々が訪れているという。小中学生や家族連れも多いらしい。
会場内のレストランでは、世界各国の料理が提供されていて、食の万博にふさわしい魅力で溢れている。日本館では本格会席料理店とフードコート(すき焼きやてんぷら、カレーなどを出品)の二つを設置していて、どちらも好評のようだ。
国際化が進む現代、生存の要ともいえる「食」について考えるのは重要だ。日本から発信するだけでなく、多種多様な世界の食文化と連携することで、持続可能な未来を切り開けるだろう。
(玉谷大知)