都心から程近い千葉県浦安市。そこには人々を魅了し、絶対にまた来たいと思わせる夢の国がある。東京ディズニーリゾートはこれまでの約30年間、テーマパークとしては日本最高峰の人気を誇り続けてきた。過去三年間連続で入園者数を更新するなど、その集客力は衰えることがない。なぜ、ディズニーランドに人は集まるのか。その秘密を内側と外側の両面から探りたい。
(平沼絵美)
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夢の国の内側から探る
株式会社オリエンタルランド広報部の長島諒子さん、菅原海さんに、その運営方針と徹底したおもてなしの裏側を聞いた。
東京ディズニーリゾートは「永遠に完成しない」という。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの二つを中心に常に変化をもたせ、いつ訪れても異なった感動をゲスト(来園者)に提供する。パーク内で販売されるフードやドリンクは常に1000種類を超え、そのうち300種類以上が一定期間で入れ替わる。
さらに、新しいアトラクション、エリアの開発は時代やゲストの需要に合わせて構想される。今年4月には東京ディズニーランド内エリアの再開発、東京ディズニーシーでの新テーマポートの開発が決定している。再来年以降には導入される予定だ。
ゲストの生の声にも耳を傾けている。毎日、エントランスでゲストを対象とした調査を行っている。小さな子どもからお年寄りまで、幅広い世代の需要に応えるために、地道な作業も怠らない。
パーク内従業員であるキャスト達の行動基準として、「SESC」と呼ばれる4つの優先事項がある。これは「安全」「礼儀正しさ」「ショー」「効率」を意味する英単語の頭文字をとったものだ。彼らはこの優先順位の範囲内で、彼らなりの柔軟なおもてなしをゲストに提供している。
東京ディズニーリゾートを訪れる人の90%以上は、再来園者である。絶え間ない変化とキャストによる手厚いおもてなしが、ゲストを感動させていることをこの数字が証明している。
この夏は、両パーク共に水を使った華やかなイベントが開催される予定だという。東京ディズニーリゾートで楽しく涼むのも良さそうだ。
教授の眼から探る
東京ディズニーリゾートの人気の秘密を第三者の視点から探りたい。ディズニーテーマパーク経営に詳しい慶大大学院経営管理研究科の村上裕太郎准教授に話を聞いた。
まず、大きな特徴として海外のディズニーランドはアメリカのディズニー社が直営している中、「東京ディズニーリゾート」は日本の会社であるオリエンタルランドが運営していることが挙げられる。これがゲストの9割以上を占める日本人客からの需要に見事にこたえ、高い満足を引き出している。
具体的には、非日常を演出するためのアトラクションへの設備投資、ゲストを飽きさせないイベント、絶好の立地とリゾートの大きさ等、様々な要因によって驚異的なリピート率を獲得している。
また、東京ディズニーリゾート独自のパーク作りも重要な役割を果たしている。例えば東京ディズニーシーの開園当初、園内のアトラクションのほとんどがオリジナルであった。
東京ディズニーリゾートを訪れたゲストを分析すると、その多くは「ファミリー」であり、開園当時から大きな割合を占めている。また、近年は40代以上の層が増加しており、三世代ファミリーでの来園が増えていることが、その背景にはある。また舞浜は関東近郊に住む人にとって便利な立地だ。
さらに、日本人固有の「お土産文化」や「ファン気質」が、高い物販収入とリピート率に関係していると考えられる。完璧に創られた世界観がファンを生み、「もっとディズニーランドを知りたい」「また来たい」と思わせる。
ダッフィーというキャラクターのぬいぐるみをわが子のように抱いてパーク内を回るのも日本のゲスト特有である。専用の服を着たぬいぐるみを見せながら歩く光景を、海外のディズニーランドで見ることはない。
村上准教授は、今後東京ディズニーリゾートがこれまで以上にゲストの間口を広げていくことを期待している。その対象の一部は、観光で訪れた外国人となるだろう。2020年に開催される東京五輪に向け、誰にでも楽しめる空間づくりが求められている。
世界でも有数の集客を誇る東京ディズニーリゾート。夢の国は、単なる魔法によって生まれたのではない。その人気は、徹底したゲストの分析と市場分析に裏打ちされた企業努力によって生み出されたものなのである。