ネットで動画楽しむ前に

サブカルチャーを語る際に忘れてはならないことがある。著作権の問題だ。日本のサブカルチャー産業界では現在、著作権の考え方の見直しが求められている。

そもそも著作権とは何だろうか。著作権法17条では、著作権は著作者人格権と財産権の二つに分かれている。著作者人格権は、著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることはできない。著作者の死後も一定の範囲で守られることになっている。

財産権はその一部または全部を譲渡したり相続したりできるため、権利者は著作者ではなく、著作権を譲り受けたり、相続したりした人ということになる。例えば、誰かの作品を違法に複製することは財産権を侵すことになるのだ。ここまでは著作権法を知らなかったとしてもある程度は想像のつく話かもしれない。

問題なのは、著作権を侵害された場合、著作権を有する当事者が告訴しなければならないため、明確に違反者を特定して訴訟を起こさない限り損失を回復できないことだ。ネット上であれば匿名で他人の著作物を流すことができるので、ネット上の違反者を相手にしたとき、個人では到底対応しきれない。顕著な例は、特に海外のサイトで動画サイトにおいて著作権の切れていない日本の映画がアップされていたりするケースである。

しかし今回特筆すべきは、こうした違法行為によって特定の個人や法人が利益を得ていることだ。著作権を有する製作者などがまだ有名でない場合、リンクを貼り付けられることが多方面に名を売り出すチャンスだ。著作権に関して取締りを強化するのはむしろマイナスになる。

違法な転載によって得するのは作者だけではない。作品を違法転載した者が利益を得ることもある。人気作品を自分のホームページに貼り付けてアクセス数を稼ぎネット上での地位を上げることに利用するのだ。これを商業的に活用すれば金銭的な収入にも繋がりうる。

具体的な例としてゲームの実況プレイを利用した客寄せがこれにあたる。動画サイトが、客寄せのためにゲームそのものではなく実況プレイ動画を利用することにより利益を得ているのだ。

プレイされるゲームは個人の制作した中、小規模のゲームが大きな割合を占める。ゲームの権利を持つ制作者側に対して、大手動画サイトを運営する会社などが非営利を理由に使用許可を得て実況プレイ動画を掲載するが、実際には利益につながっていることも多い。

このように人の作品を利用し、著作権法に違反しながら財産を稼ぐ者は少なくはないし、一方で得るべき利益を失っている者もいるのだ。

現行の法律では、こうしたネットでの情報の氾濫を防ぐことはできていない。ネットの利用方法と規制の難しさは度々問題になるが、この著作権に関してはとても身近なものである。

現在、日本のサブカルチャー産業は世界に認められつつあり、これからの大きな財源ともなりうる。ネットで少し検索をかければ、簡単に無料コンテンツが手に入る。法を犯すことは簡単だ。しかし、その手軽さに甘んじ著作権問題を避けていったところで未来はあるのだろうか。今一度自分に問いかけてみてほしい。  
(八木理志)