お金持ちになって幸福になりたいと思う人間は多い。しかし本当にお金と幸福は直結するのだろうか。どうすれば、私たちはより幸福になることが出来るのか。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科前野隆司教授に伺った。
お金の幸せの関係性
ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンの調査によれば、年収7万5千ドル(日本円で約1千万円)までは、お金と幸福度は比例関係にあるが、年収がその額を越えると必ずしもこの関係は成り立たないという。
沢山のお金を持っているのに幸せになれない場合、原因には高年収だからこそ会社を動かさなければならない責任を感じてしまったり、仕事で成功を収めたあとに燃え尽き症候群になってしまったりすることがある。
宝くじに当たった人の幸福度は低いというデータもある。突然大金を手にしてお金持ちになったとしても、それだけでは幸福にはなれない。
継続してこそ幸せ?
幸福感を与えるものは、大きく2種類に分けられる。長続きしないものと、するものだ。長続きしないものの代表例は、お金、もの、地位だ。一瞬でなくなってしまうから、その欲望は尽きることがない。対する長続きするものの例としては、安全な環境、健康、心の持ち方などがある。
お金から得られる幸福感には持続性がないため、お金を稼ぐこと自体が最終目標だといつまでも幸福になることは出来ない。2つの豊かさをバランスよく揃えることが大切だ。
4つの幸福因子
では、具体的にどうしたら幸福度を上げることが出来るのか。幸福になるには、4つの因子があるという。
1つ目は、自己実現と成長。たとえ叶わなくても、夢や目標を持って生きることに意味がある。2つ目は、繋がりと感謝。友達の数が多い人ほど、幸福度は高い。3つ目は、前向きと楽観。細かいことは気にせず、なんとかなるという気持ちでいることも大切だ。4つ目は、独立とマイペース。人の目を気にしない。まさに福澤諭吉の独立自尊の精神といえる。
以上4つの因子は全て連携している。外に出かけて誰かと話すことで、夢や目標が生まれ、目標達成のためには行動に移す。どれか1つでも達成すると、幸福の好循環に入ることが出来る。
幸福のメカニズムを覚え自分自身を客観視するよう普段の意識を少し変えてみるだけでも、効果は期待できるという。
アメリカの研究によると、大学生は他の年代に比べて幸福度が高いという。たくさんの人と出会い、話したり、遊んだりする機会が多いからだろう。学生である今を楽しむことが、幸せな人生の第一歩になるのだ。 就職活動を控える大学生には、漠然とした将来への不安がある。しかしどのような職に就きいくら稼ぐことになっても、幸せになるための答えは、この学生時代にこそ隠れているのかも知れない。まずは今を有意義に過ごしていこう。
(玉田萌)