「慶早戦が近づき、早稲田を倒せなどと応援指導部は騒いでいますが、実際慶應と早稲田の仲はそんなに悪いものなのでしょうか。」(江戸むらさき 法1男)

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「悪いに決まっているだろう!俺は早稲田のあのガツガツした雰囲気がどうも気に食わん!」と今年の慶早戦でも稲穂狩りに熱を上げる所員N(経2男)と、「いくらライバルでも同じ大学生、ハートの奥では繋がっているはずよ!」と相変わらずラブ&ピースな所員H(法2女)。

「良い考えがあるわ!」Hは嫌がるNを無理矢理、平日の早稲田大学に連れ出した。昼休みの大隈銅像前は早稲田の学生で溢れている。「うう・・・耐えられぬこの早稲田のニオイ…」と体調不良を訴えるNを無視し、Hはとんでもないプラカードを取り出した。

『FREE HIGH-FIVE FOR PEACE』『慶應から、早慶の友情を確かめに来ました!』と書かれている。「なんだこれは!気持ち悪い!てかハイファイブってなんだ!」と苦しみながら抗議するN。構わずHがそのプラカードを掲げるやいなや、人混みから男子学生が笑顔で近づいてきた。するとどうだろう、Hと力強いハイタッチを交わしたではないか。

「ほら見てた?ハイファイブは、英語でハイタッチっていう意味なの!いま流行りのフリーハグを、もっとラフにしてみたの!」と得意げなH。
そろそろカタカナが多すぎて訳が分からなくなってきたという読者にもわかりやすく説明しよう。フリーハグとは、道端でそう書かれたプラカードを持っている人と抱擁を交わすことで簡単にお互いの友好関係を確かめ合える、少し前に流行した運動だ。

大隈像に見守られて……
大隈像に見守られて……

結果としては、宿敵であるはずの慶應生である所員達と、男女問わず多くの早稲田生が笑顔で彼らとハイタッチを交わしてくれた。自らハイタッチを求めてくる者、こちらの訴えに恥ずかしそうに応えてくれる者、写真撮影を求める者…。その数は優に150人を超えた(H調べ)。

その様子を見ていたNも、自らの心が動く音を聞いた。「もしかして自分は、早稲田という人種に偏見を持っていたのではないか。彼らも我々と友好関係を保ちたいと願う優しい心の持ち主なのではないかーー」




フリーハイタッチを始めてから15分、そこにはHの横で早稲田生とハイタッチを交わす笑顔のNの姿があった。
(蝶々夫人)