慶早戦の見どころは選手の懸命なプレーに加えて、スタンドが一体となる応援にある。2時間を超える試合の中で選手と応援席の士気を鼓舞するものは、ブラスバンドの演奏である。

神宮のスタンドで聴くことができる演奏は應援指導部吹奏楽団によるものだ。慶早戦の陰の主役ともいえる彼らの姿に迫るべく、吹奏楽団の三宅明日香さん(文3)にお話を聞いた。

吹奏楽団の部員数は約70人。年度にもよるが約半数の部員が大学生になってから吹奏楽を始める。「神宮に足を踏み入れたときの雰囲気が好きなんです」と語る三宅さんのように、野球などのスポーツ好きが高じて入部する者もいる。

練習は週に2回。演奏技術を磨く最たる目的は慶大体育会の応援だが、式典などで演奏することもあるという。また秋になれば、演奏しながら行進するドリルの練習も入る。加えて土日には応援のため試合に赴く。

早慶戦応援席で輝く部員たち
早慶戦応援席で輝く部員たち

「野球の応援は活動を通しても主体となる応援の一つで、特に慶早戦となれば思い入れが違います」と三宅さんは言う。 慶大野球部の攻撃時にはいくつかのチャンスパターンが鳴り響くが、これらの曲は全て歴代の部員によって作られたものだ。チャンスパターンは常に変化していて、最も新しい『ソレイユ』は2年前に作られたものであるし、ファンファーレは毎年の指揮者によって作曲される。


野球の応援は試合が大幅に長引くこともあり、屋外の神宮球場では天候の影響も大きく受ける。昨春の慶早戦は摂氏30度を超える暑さの中での応援となった。大変ではありませんかと尋ねると、「同じ人が演奏し続けるのではなくて、パート内で交代して休憩を挟みながら演奏します。とはいえ慶早戦では内野席と外野席に分かれる上、入口の係にも人員を割かれるので大変です」と苦労話も明かしてくれた。

宿敵との対戦では、塾生一丸となって応援を作り上げたい。「慶應の応援席はマナーがよく、野球のルールのわからない人でも一体感を味わえます」と三宅さんが言うように、野球が好きな人も、初めて球場に行く人も楽しめるのが慶早戦だ。
今季の慶早戦で注目して欲しいところは、「今年は演奏の完成度の向上に努めてきました。また、応援中の演奏以外の動きにも力を入れているので、そちらも是非見て欲しいです」ということだ。

慶早戦の前にも、16、17日の立大戦ではフェイスペイントのイベントがあり、19日は日吉、20日には三田で早大との応援合戦が行われる。これらの機会で曲を予習し、慶早戦では吹奏楽団の演奏にも注目して慶大ナインを一緒に盛り上げてみてはいかがだろうか。
(安田直人)