後ろ倒しとなった今年度の就職活動。3月の解禁まで残りあと2ヶ月だが、それまでに万全な下準備を整えたいところだ。
今回本紙では、「海運」「出版」業界を代表する2社に業界の特徴などについて話を聞いた。自分の将来を見据え、適職・適社を知るきっかけとなれば幸いである。
「海運」→株式会社商船三井
12月号の業界研究特集はこちら→「食品」、「金融」、「不動産」
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【出版】
株式会社小学館 読者に「面白い」を届ける
―会社の理念
出版物は人の心に良い方向を生み出す、何らかの小さな種子をまくことができます。人生の中で大きく実となり、花開く種子をまくという仕事が出版であり、これが当社の理念です。
東日本大震災のようなことがあると、まず衣食住が最優先です。その点で本は確かに「いらないもの」ですが、「あったら嬉しいな」と思えるものでもあります。業界全体で震災地域に本を送る支援を行いましたが、子どもたちが本を読んで喜ぶ姿を見て、人々の心に種をまくということを実感しました。本と出会うことで、その人の人生の広がりに貢献できればと思っています。
―業界の特徴
この数年でライフスタイルが変化してきています。電子書籍を読んだり、スマホで情報を入手する人が多くなり、いわゆるリアル本の売り上げが相対的に落ちてきています。
しかし、デバイスを作るのは出版社の役割ではありません。メディアは変わっても、そこにどういうコンテンツを載せていくかが出版社にとって重要であり、他業界に譲れない部分です。
―従業員数
当社の社員は約740人で、うち女性が約250人です。
出版業界はさほど大きな業界ではありませんので、たとえ大手企業であっても、その数は900人ほどと、多くありません。狭き門と言えば狭き門です。
―仕事の環境
出版社で働く社員の特徴は、毎日、スケジュールが違うところです。
部署によって異なりますが、漫画や文芸の部署に配属されると、作家の原稿を深夜まで待つ、ということもあります。極端な話でいえば、作家のもとに数日居続けるということもあります。
女性誌の場合、取材からモデルの撮影の手配まで、さまざまな仕事があります。外出したまま出社しない日もあるし、校了まで一日中机の前ということも。
配属は必ずしも希望通りとはいきませんが、キャリアを積んで別の部署に異動することも可能です。
―同業他社との違い、強み
「小学館」という社名の通り、子どもの本から生まれた会社という出自があります。
ドラえもんやポケモンなどのキャラクターを膨らませ、商品として売っていくキャラクタービジネスをどこよりも早く手がけたというのが他社との違いであり、強みでもあります。
一方、児童・学習誌、コミック誌、週刊誌、女性誌、辞書・事典、美術書など、さまざまな本を出版しています。
一つの会社からどんな本が出ているかは、読者には関係ないことで、それが「おもしろいか」がすべてです。幅広いジャンルで読者に興味関心を持ってもらえる出版物を目指しています。
―塾生にメッセージ
これから多くの企業の話を聞くと思いますが、それは今にしかできない経験です。いろいろなものを見て、経験して、じっくり将来を考えてほしいです。
その中で、「自分はこれがおもしろい」と言えるものを一つ持っているといいと思います。ただ、安易にその会社の商品が好きだからでは不十分です。その会社で自分が何をやりたいかを深く掘り下げてほしいです。そして自分のやりたいことに向かって努力でき、「おもしろいと言えるもの」をずっと持ち続けることが大切だと思います。 (聞き手=武智絢子)