誤報が生じる原因とは
三田キャンパス西校舎ホールで今月1日、「対論:今、日本のジャーナリズムを考える。『朝日問題』と『朝日批判』をめぐって」が法学部主催のもと開催された。ジャーナリストの池上彰氏と法学部長の大石裕教授が朝日新聞の誤報問題を題材にジャーナリズムのあり方を語った。
誤報が起きる原因について、大石教授が「スクープ報道を行いたいがために正確性が犠牲になってしまう面がある」と指摘。それに対して池上氏は「記者は他社が知り得ない特ダネをつかむことを重要視し、特に大きな記事になるほど、インパクトを求めてしまう傾向にある」と理由を分析した。そのうえで今回の誤報問題を「原発という国際的に重要な問題での誤報だったため大きくなった。さらに問題が重なったことで、社長が辞任して責任を取ることになった」と総括した。
池上氏は、今回の問題は、取材の裏取り不足や見出しの付け方にあったとした。新聞には言論の自由がある一方で、ジャーナリズムは公正中立な報道を目指す必要がある。そのバランスをどう保つかについて、池上氏は「報道は事実に即して取り上げる必要があるが、コラムや論説に関してはある程度自由な主張が認められるはずだ」と語った。
朝日新聞を巡る批判についても言及された。特に今回、朝日新聞が国益に反する報道を行ってきた点への批判が起きた。それに対して、池上氏は「『国益に反する』報道とは何を指すのか。ジャーナリズムはまず真実に近づくための客観的な努力が必要である」と述べた。
最後に池上氏はジャーナリスト志望の学生に対して、「ネットが発展して記者会見などの情報が誰にでも公開されるようになった現在では、豊富なバッググラウンドを持った記者が自分なりの分析をすることが必要になるだろう」とアドバイスをした。