投票率の向上なるか
今月8日から12日にかけて全塾協議会事務局長・事務局次長選挙が行われる。今年度は対立候補がおらず1組のみの立候補となるため信任投票となる。投票率の低迷や投票における公平性確保が昨年度に引き続き課題だ。立候補した諸田・上森ペアは公約として自治会費の増額を掲げており、有権者の支持が得られるか問われている。(川瀧研之介)
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今回の選挙に立候補したのは事務局長候補の諸田直也さん(経3)と事務局次長候補の上森孝史さん(経3)。両候補者が掲げた選挙公約は「自治会費交付金の増額」、「増額実現に向けた全塾協議会組織体制の抜本的改革」、「『頼られる』全塾協議会の実現」の3つだ。局長候補の諸田さんは現事務局長であり、承認を得れば2年連続の局長就任となる。
全塾協議会とは、慶大における塾生の最高意思決定機関だ。自治会費の公正な配分や塾生自治の基本方針を決定することなどを主な業務としている。
同選挙は協議会のトップである事務局長と事務局次長を決定するものであり、投票率が10%を下回った場合は再選挙が行われる。投票率について、選挙管理委員会委員長の河野維一郎さん(経4)は「毎年、10%から15%の間を行き来している状況。20%に達した例はここ数年ではみられない。今回は信任投票であるため、またしても投票率の低迷が予測される」と懸念を示した。
過去には投票率が10%に届かず再選挙になった年もある。投票率向上は本選挙における長年の課題だ。「ハガキやメールによる投票の呼びかけのほか、広報の方法を模索しているところだ。例えば、まだ構想段階に過ぎないが、影響力の大きいミスコンを利用してみるといったことを考えている。必修科目の大教室などでミスコン候補者たちに投票を呼びかけてもらうものだ」と河野さんは語る。
キャンパスごとに投票率が異なるのも問題だ。投票所は日吉、三田、矢上、SFCの各キャンパスに設置されるが、例年SFCにおける投票率がほかのキャンパスと比べて特に低くなる傾向にあり、改善を要する。
しかしながら「選挙管理委員会だけではどうにもならないのが現状である」という。選挙管理委員会は、選挙期間のみに組織される機関であるため、本腰を入れた改革に取り組みにくい。投票率向上のためには、広報活動のみならず、こうした組織の仕組みを見直すことも必要だ。
再選挙も不成立となった場合、全塾協議会は解散し、学園祭の中止や塾生会館の使用禁止といった、塾生にとって不利益となる事態が発生する恐れがある。河野さんは「全塾協議会事務局長・次長選挙は学生自治の最後の砦。ぜひ一票投じてほしい」と呼びかける。
また、一昨年には選挙において不正疑惑が持ち上がった。不正防止の取り組みとして、河野さんは「候補者側の人間は選挙に関わらせない。投票箱の保管場所も工夫する。さらに、学籍番号照合による不正投票の防止も昨年に引き続き実施する」としている。
諸田・上森ペア 自治会費改革を公約に 全塾の認知度向上が課題
諸田・上森ペアが掲げる選挙公約3つのうち、2つは自治会費増額に関連したものだ。長らく検討されてきた自治会費の増額は、学生部の承認を得られず今年7月に白紙となっている。
大学当局が増額を認可しなかったのは、自治会費の値上げはかつて慶大に存在した自治組織である自治会にしか実行できないとしたためだ。諸田さんは「全塾協議会の発展の歴史上、構造のねじれは変わらない事実」とした上で、「塾生の意思をより機動的に反映することによって、自治会よりも正当性のある組織を作ることができれば大学からの理解を得られるだろう」と自治会費増額に向けた戦略を語った。
また、公約では「『頼られる』全塾協議会を実現する」としている。選挙の低投票率からも分かるように、塾内において全塾協議会はあまり認知されていないのが現状だ。諸田さんは「広報の強化ももちろんだが、塾生にとっての付加価値を高めることで結果的に認知度も向上すると考える」と述べた。付加価値を高める方法の一つに「公聴会」の開催を挙げる。アンケートや塾内有力団体からの意見聴取といったさまざまな手法によって塾生とより密接な関係を構築する。また、現在は所属団体のみへの発行に限定されている全塾協議会報を塾生に配布することも検討中だという。
「キャンパス間の利益還元格差の是正や認知度向上のための大々的な広報を行うにも財源の問題は付きまとう」と諸田さん。自治会費増額は塾生と大学当局の双方からの支持を得られなければ実現しない。どのように説明をし、政策の支持を得ることができるか注目される。