「一度、学問に入らば、大いに学問すべし。農たらば大農となれ、商たらば大商となれ」。福澤諭吉の言葉だ。慶應に入学しただけで終わりではない。かつては「座っていなくても卒業できる」と言われた世代に比べたら学生は勉強するようになったといわれる。
しかし、実際に慶應の学生たちは授業に対してどのように感じているのだろうか。そしてグローバル化を推進する慶大は4月から試験的に4学期制を導入している。しかし、実際に4学期制の授業を受けた学生はどう感じているのか。ウェブアンケートを通じて、慶應の授業に関する意見を聞いた。慶應塾生新聞会では、授業への満足度、4学期制の賛否、海外留学への興味について慶大の学部生にアンケートを行った。 (在間理樹)
***
▼調査方法
10月2日から31日まで、ウェブアンケート方式で慶大学部生全員を対象に実施した。対象の学生数は2万8963人、うち有効回答は464人だった。
回答者の学年は1年生、2年生、3年生、4年生の順に、136、173、99、56人。回答者の学部は、文学部・経済学部・法学部・商学部・理工学部・薬学部・医学部・看護医療学部・環境情報学部・総合政策学部の順に140、87、110、48、50、5、1、2、11、10人。(数字はすべて少数第2位を四捨五入)
Q1.慶應での授業に満足していますか?不満がありますか?
少人数授業を望む声
環境整備も課題
授業への満足度については、47・8%の学生が「満足している」、52・2%の学生が「不満がある」と答えた。
両者の学生ともに、その理由として最も多く挙がったのが「講義内容」だ。授業の面白さを満足の理由とする学生がいる一方で、授業に不満を抱く学生の意見として、少人数での授業を求める声があった。大教室での授業は発言がしづらいうえ、受身の授業スタイルになってしまうからだ。授業に満足をしている学生のなかでも、授業に当たり外れがあることを指摘している意見がある。学生がやりがいを見つけられる授業を今後も増やしていかなければならないだろう。
次に、授業環境についての意見を紹介する。特に多かった内容が「教室の空調管理をもっとしっかりしてほしい」、「校舎設備の改善をしてほしい(机がガタガタするのを直すなど)」といった設備に対しての意見だ。
慶大では節電を積極的に行なっているため、冷房や暖房の使用期間が時期によって定められている。しかし教授、学生共に授業に集中するためには、気温を考慮し、柔軟な対応をしてもよいだろう。
また、授業の制度に対しての改善を訴える声は、授業に満足していると答える学生からもあがっている。特に、履修制度に関する意見が多く見られた。人気の授業を取るには抽選を受ける必要がある。それに対して「その科目を学びたいと思っている生徒を抽選によって受講させないのはおかしい」という意見があがっている。また、「履修申告を通年ではなく春学期、秋学期で別にして欲しい」という意見も目立つ。秋学期のみに開講する授業を選ぶ基準は現在、シラバスに載っている情報のみだ。秋学期に、担当教員によるガイダンスを実施したあとの方が学生は授業を選びやすくなるだろう。
Q2.四学期制の導入について賛成ですか?反対ですか?
2期制と4期制が混在
学生に利点の説明を
慶大では今年の4月から理工学部、総合政策学部、環境情報学部で4学期制の導入が始まっている。4学期制導入の是非を問う質問では、賛成が40・5%、反対が59・5%という結果になった。
4学期制導入のメリットとして大学側は海外留学がしやすくなる点や週2回の授業を実施することによる高い教育効果をこれまで挙げてきた。そのような効果に期待をして4学期制導入に賛成する学生が4割を占めていると考えられる。
その一方で、「これまでの制度で不便がなかった」という意見や「そもそも4学期制のことをあまり知らない」という意見が存在していることに注目したい。多くの学生が4学期制による利点を実感できていない状態ではないだろうか。
文系の各学部では、学年別のカリキュラム編成であることや教室数の不足等を解決できず、4学期制を導入するか未定である。現状では一部の学部で一部の授業のみが4学期制を採用している状態だ。今後、4学期制を本格的に進めていくのであれば、たとえば学期制を移行するとどのような留学プログラムへの参加が可能になるのかなど学生への説明が鍵になるだろう。
今回のアンケートでは実際に4学期制を経験している理工学部生やSFC生の声を集めることができた。まず、実際に4学期制の授業を受講した理工学部の学生が挙げたのが「テスト回数の多さ」と「授業の進度の早さ」だ。また、SFC生の多くが挙げた意見が、「2学期制と4学期制の授業の混在による不都合」だ。週2コマの授業を行うことによって本当に学習効果が上がるのか、さらに学期制が混在しているこの状況をこのまま維持していくのかという2点について、来年度以降の制度をどうするのか。検討が求められそうだ。
Q3.海外留学に興味がありますか?
留学プログラム
多様なプランの提示を
海外留学に「興味がある」と答えた学生は67・7%。多くの塾生が海外への関心を持っていることがわかる。留学を志望する理由のうち一番多い回答が「外国の人とコミュニケーションをとりたいから」であり、次に「学んだ外国語を実践したいから」が続く。自分の外国語力を伸ばしたいと考えている塾生が多いことが考えられる。
留学制度に関する要望として、「留学プログラムの数や種類を増やしてほしい」という意見が多く見受けられた。現在、学部生約2万9千人に対して慶大は15個の短期留学プログラムを公開している。だがたとえば、東大と比べてみると、学部生の人数は約1万4千人であるが、33個のプログラムが用意されている例もある。提示されるプランが多ければ多いほど、留学に興味を持つ学生も増えるはずだ。また、慶大でとることが出来る留学プランは、単位を取得できるものが少ない。「もっと慶應の単位と連動させてほしい(経4)」といった意見のように、休学をせずに卒業できるためのプランが増えれば、塾生は留学をしやすくなるはずだ。
一方で、海外留学に興味がない理由としてもっとも多く挙げられたのが「金銭的な理由」だ。「短期留学プランの金銭的負担を減らしてほしい(経2)」といった金銭的支援を必要とする意見も多い。このことから、留学を希望しながらも、金銭的に留学を断念している学生も多いことがわかる。しかし、留学プログラムを用意しているのは慶大だけではない。国や自治体、独立行政法人、企業が行っている奨学金制度もある。