今季、ジュニア選手権リーグ戦を「主戦場」とした(時計回りに)FL阿井宏太郎、FL高橋立寛、WTB三木貴史、NO8立石真也、FB小林俊雄、WTB金本智弘。彼らは現在全員2年生。来季以降、慶應蹴球部の「牽引役」となれるか【安藤貴文】
今季、ジュニア選手権リーグ戦を「主戦場」とした(時計回りに)FL阿井宏太郎、FL高橋立寛、WTB三木貴史、NO8立石真也、FB小林俊雄、WTB金本智弘。彼らは現在全員2年生。来季以降、慶應蹴球部の「牽引役」となれるか【安藤貴文】

11/16(日) 東海大学・湘南キャンパスラグビーグラウンド(神奈川県平塚市)
14:00 Kick off ○ 慶應義塾大学B 32-12 東海大学B (関東大学ジュニア選手権リーグ戦最終節)
15:45 Kick off ● 慶應義塾大学C 12-50 東海大学C (練習試合)

まさに「有終の美」。ジュニアリーグ戦最終節、東海大学Bに快勝

11/16。東海大学・湘南キャンパスラグビーグラウンド。
慶應義塾大学Bチームは、ジュニア選手権リーグ戦の今季最終節を、見事勝利で飾った。

「チーム全体として、すごく良かったですね。東海に絶対勝つという気持ちを持って、受けることだけはしないようにと(試合前、選手たちに伝えた)。確かに、慶應は今回の試合の勝敗に関係なく、既に『グレード1』(決勝トーナメント)進出は決定していました。でも、たとえ見返りがなくとも、絶えず目の前の試合にベストを尽くすことが出来る。これこそが、『チャンピオンチームの資質』であると、私は常々選手たちに言い聞かせていますから」(林雅人監督)

前半、相手ディフェンス網をかいくぐり、突破を図るFL高橋立寛(右)【安藤貴文】
前半、相手ディフェンス網をかいくぐり、突破を図るFL高橋立寛(右)【安藤貴文】
試合終了後、極寒雨中のインタビュー。
だが、試合を振り返る指揮官の顔には、微塵の曇りもない。自然と笑みが零れる。

ジュニア選手権リーグ戦最終節、東海大学Bチーム相手に、「今季のジュニアリーグ戦の中で、一番良い内容」(林監督)での勝利だったのだから、無理もないだろう。

内容の伴った快勝。以下に、勝因をいくつか挙げたい。

まずは、守備面での意思統一。
前からのチェイシングをFW全員が怠ることなく遂行。とにかく前から前から、相手にしつこく絡んでプレッシャーをかけ続けたことで、徐々に相手を自陣に押し込めることに成功した。

また、要所で「低く鋭いタックル」がビシっと決まったことも大きかった。
「フィジカルチーム」(林監督)の東海大学Bに対して、接点の部分で互角以上の戦いを演じた選手たちを、指揮官も高く評価した。
「ブレイクダウンの部分が、今日はすごく良かったと思うんです。相手も圧力をかけてきた中で、ディフェンスの際にはこちらから基本的に絡めにいって、相手に多くの人数を使わせていましたし」(林監督)

怪我からの復帰戦、見事なゲームコントロールを見せたSH藤代尚彦(左)【安藤貴文】
怪我からの復帰戦、見事なゲームコントロールを見せたSH藤代尚彦(左)【安藤貴文】
一方、攻撃の際には、「エリア」を強く意識。
試合を通じて、SH藤代尚彦(環3)・SO川崎大造(環4)のハーフコンビが中心となって、エリアマネジメントを完遂。彼らが見事にゲームをコントロールした。

「怪我からの復帰戦でしたが、パスワークが良かったですね」(林監督、藤代のプレーに関してのコメント)

「ジェネラルキックに関して、存分に威力を発揮していたと思います」(林監督、川崎のプレーに関してのコメント)

「東海のBチームにこういった戦いが出来たってのは、(ジュニアの)選手たちにとって大きな自信になる」(林監督)

ちなみに慶應Bは、今季のジュニア選手権リーグ戦を3位でフィニッシュ。

11/30に行われる、「グレード1」(決勝トーナメント)のジュニア選手権リーグ戦2位・帝京大学Bとの一戦(於:帝京大学グラウンド)に勝利すれば、聖地・秩父宮ラグビー場で行われる決勝戦(12/13、12:00~)に駒を進めることが出来る。

「今日の試合(東海大学B戦)に勝って一番良かったのは、帝京大学Bと試合ができるってことですよ。帝京とやりたかった。(Aチームの)今季対抗戦優勝の夢を打ち破った相手、しかもジュニアも今季帝京に負けてスタートしてますから。そこのリベンジをしっかり果たして、できれば決勝で早稲田と試合できたら、最高のシナリオですけどね(笑)」(林監督)

After Recording 取材を終えて・・・

グレード1(決勝トーナメント)の初戦で帝京大学を倒し、12/13に秩父宮ラグビー場で行われる決勝の舞台に立つ――。そのためには、「セットプレー(ラインアウト)の安定」これはもう絶対不可欠な要素だ(写真は9/28に行われた慶應義塾大学Bと明治大学Bとのジュニア選手権リーグ戦より)【安藤貴文】
グレード1(決勝トーナメント)の初戦で帝京大学を倒し、12/13に秩父宮ラグビー場で行われる決勝の舞台に立つ――。そのためには、「セットプレー(ラインアウト)の安定」これはもう絶対不可欠な要素だ(写真は9/28に行われた慶應義塾大学Bと明治大学Bとのジュニア選手権リーグ戦より)【安藤貴文】
ジュニア選手権リーグ戦全日程が終了した今、改めて林雅人監督に今季の「ジュニアチーム」を振り返ってもらおうと思う。

「間違いなく、ジュニアチームは(試合を重ねるごとに)ステップアップしましたよね。まずはゲームコントロールに関して。自分たちが『どこで』戦うか、十分分かってきて、それは敵陣であると。要はエリアマネジメントの部分の成長ですよね。そして、何よりAチームから繋がるディフェンスの部分。彼らもここを自分たちの一番の強みとしました」

「アタックに関しても、色々な形から(得点を)取れるようになってきたところが大きいですね。セットプレー、カウンターアタック、ターンオーバー等々、選手たちが局面でしっかり判断できるようになってきたな、と」

ジュニアチームの戦略の機軸は、ディフェンス→(ショート)カウンター。
相手が慶應陣内深くまで攻め込んできた時には、リトリートしてしっかり相手を受け止める、「低く鋭いタックル」を基本とした粘り強いディフェンスで耐える(そして、相手のミスを待つ)。

だが、攻撃に転じる準備は決して怠らない。
チームの「重心」を下げ過ぎることなく、陣形をコンパクトに保ちながら、隙あらばキックなどを上手く活用して一気呵成に(ショート)カウンターに打って出る。そのプロセスで、例え相手にボールが渡っても、今度はあくなきチェイシングで相手を混乱に貶(おとし)める。

林監督は、「春から整備し続けてきたことが、ここにきてようやく実を結んできた」と喜んだ。
「ラグビーの基礎知識」の向上は、決して一朝一夕に見込めるものではない。ジュニアの試合に出場する選手、そしてチーム自体も前進と後退を繰り返しながら、少しずつ少しずつ、歩みを進めてきた。それだけに、指揮官も感慨はひとしおである。

筆者も思う。多くの伸び盛りの選手たちが、実際に試合に出場して、「学び」がないはずがない、と。

はっきり言おう。リーグ戦を通じて、目を覆いたくなるミスも本当に沢山した。筆者自身、憤慨したことも、一度や二度ではない。これまでのリーグ戦のリポートを読んでいただければ、そのあたりの感情の起伏は分かっていただけると思う。

だが、そんな瑣末なことよりも、今後の試合(来季以降)でAチーム入りを狙う多くの選手たちが、ジュニアのリーグ戦を通じて、「ラグビーの基礎知識」を存分に吸収し、試合の「勘所」をより明確に掴むことが出来るようになったのは、何物にも代え難い、貴重な体験だったと言える。決して普段の日吉グラウンドの上では体感できない、リアルな感覚が彼らの血となり、肉となるのだ。

さて、11/30に行われる「グレード1」(決勝トーナメント)の帝京大学Bとの試合について。
先述の通り、今季ジュニア選手権リーグ戦初戦でも慶應Bは帝京Bと対戦したのだが(9/13、●25-33)、その時の慶應Bは、セットプレーが壊滅的、マイボールラインアウトの確保すらままならない状態だった…。試合のマネジメントの部分でも、稚拙を露呈した。兎に角、セットプレーの脆弱が、目を覆いたくなるばかりであったことは、痛烈に記憶している。

今回の試合、もちろん結果にも拘っていきたいが、個人的には例えば「マイボールラインアウト」を全て確保、その流れの中で1回でも相手を完全に崩しきってトライできたら、それでオッケーじゃないかとも思う。

それが、「成長」ってもんだよね?

(2008年11月16日更新)

写真・文 安藤 貴文
取材 安藤 貴文