最長10年間の補助金支援
「スーパーグローバル大学創成支援」事業のタイプA(トップ型)に慶大が採択された。文部科学省が先月26日に発表した。これを受けて慶大は今月2日、清家篤塾長と國領二郎常任理事の出席のもと、記者会見を開き、同事業の構想を説明した。この事業に採択された大学は、文科省から最長で10年間の補助金支援を受けることになる。日本の大学の国際化を進めることが狙いだ。 (上山理紗子)
「スーパーグローバル大学創成支援」事業は、日本の国際競争力の強化に貢献する大学の教育整備支援を目的として、文部科学省が今年度から新たに始めた。今年の4月から文科省が大学に向けて説明会を開き、5月末までに支援対象となる大学を公募。各大学から提出された109件の構想案を審査し、タイプAには慶大を含む13校、タイプBには24校が採択された。
これを受けて慶大が開いた記者会見では、清家塾長と國領常任理事が同事業の構想説明をした。また、構想に含まれる各研究の責任者がそれぞれの研究内容や目標を説明した。
同事業における慶大の構想タイトルは「『実学(サイエンス)』によって地球社会の持続可能性を高める」。先進国の日本が現在抱える問題は、将来的には世界で起こり得る。そのときに慶大が世界を牽引する役割を担うという意識をもとに構想された。
今日の日本が解決すべき課題として「人口の少子高齢化」、「生活・経済・地政学的なリスクの増大」、「持続的成長のための創造性向上」の3つが挙げられる。それぞれに対応して「長寿」・「安全」・「創造」をテーマとした3つのクラスターを構築する計画だ。各クラスターが課題解決にむけて、高レベルな研究を行っていく。
これらのクラスターではすべて文理を融合した体制で研究が行われる。慶大は、創設者である福澤諭吉の実学の精神に立ち返り、文系理系にとらわれず課題解決に向けて知を結集することを目標としている。
国際的発信力の向上にむけては、教育研究制度と人事制度の改革を計画している。英語による学位取得コースの拡充や、全学生に占める外国人留学生の割合を10年後には10%以上に増やすといった具体的な数値目標が事業構想に記されている。人事改革では外国人教員の枠も拡大する。海外の大学266校と協定を結んできた実績など、これまでの国際化への取り組みを活かして目標の達成を目指す。
清家塾長は「慶大にとって今回の事業を推進する意義は、日本の大学として国際的に社会貢献することはもちろん、慶大内の学生や各部署が、国際化への自覚をもつことにもある」と述べた。実際に構想されている制度改革などが進んでいけば、学習環境は大きく変化することになる。
文科省による支援は最長で10年間だ。支援終了後も、慶大は今後始まる国際化計画事業を継承していく方針を示した。また、改革に伴い変更される具体的な制度などは今後発表されるとした。
【用語解説】スーパーグローバル大学の採択枠には2種類ある。慶大が今回採択されたタイプAは、世界大学ランキングでトップ100以内に入ることを目指す大学が対象とし、年約4億2000万円が支給される。タイプBは日本国内の国際化を牽引する大学を対象にし、年約1億7200万円の支援を受けることになる。