団体を運営している森江さん、渕井さんら4人
団体を運営している森江さん、渕井さんら4人

地域間の教育格差是正を目指して

「日本の大学教育における地理的・経済的格差を是正する」。

学習動画サイトmanavee(以下マナビー)はこの理念を達成すべく2010年に東京大学で産声を上げた。同サイトでは主に、大学生ボランティアが先生として出演する大学受験用の授業動画を無料で提供しており、活動にかかる資金は寄付によってまかなっている。現在マナビー参加校は全国35大学へと広がり、ボランティアの数も400名ほどになった。慶大では最初の支部として2011年から活動が始まり、現在も3人が先生として活躍している。

彼らはどのような思いで先生となり、画面の向こうの受験生に授業を届けているのだろうか。

世界史の論述問題を担当している渕井亮太さん(文2)は「予備校時代に知った世界史の面白さを伝えたい」と話す。彼がマナビーの活動を知ったのは去年の冬。テレビ番組で同団体の代表だった花房孟胤氏のインタビューを観たのがきっかけだった。「自分は私立の高校に通ったり、予備校に行ったりと受験環境は恵まれていたが、そうでない人もいる。この現状を変えることができればと思った」。既にやっていた塾講師のアルバイトだけでなく、新たにボランティアとしてでも世界史を教えることにしたのはこのような理由からだった。

森江悠斗さん(法3)も塾講師とマナビーの二足のわらじをはいている。彼も去年の暮れにウェブを通してマナビーを知った。地方の高校から慶大に進学した彼は、予備校の活用という点で地方と都会の受験生に格差があることを以前から感じていた。マナビーの理念に共感してすぐにコンタクトをとったという。「帰省したときに高校の後輩にマナビーのことを教えると興味を持ってくれた」と自身の活動に手応えも感じている。

彼らの活動は週に1回ほど。黒板はもちろん、自作の教材やスライドを使い、空いている教室や他校にあるスタジオで撮影を行っている。1本の動画約15分に2時間ほどの準備をするなど、決して楽な活動ではない。それでも他の人の授業を見たり、他校のさまざまな仲間と活動できるのは面白いという。

今後に関して「国語を通して他の科目にも良い影響を与え、将来も役に立つ力をつけてもらいたい」と森江さん。渕井さんも「世界史の通史の中でわかりにくい部分をしっかりやりたい。他の科目もやってみたい」と活動へも強い意欲をみせた。

自らの経験を周りの人々に還元しようという気概を胸に彼らの活動はこれからも続く。 (田島健志)