■小原宏貴(おはら ひろき) 神戸市出身。1995年、6歳にして家元を継承する。「いけばな」の普及と現代アート作家として国内外での活動に力を注ぐ。2015年2月26日から3月3日まで、東京・日本橋髙島屋にて小原流創流120周年記念花展を計画。小原流研究院院長、公益財団法人日本いけばな芸術協会常任理事、兵庫県いけばな協会理事、大正大学客員教授。
■小原宏貴(おはら ひろき)
神戸市出身。1995年、6歳にして家元を継承する。「いけばな」の普及と現代アート作家として国内外での活動に力を注ぐ。2015年2月26日から3月3日まで、東京・日本橋髙島屋にて小原流創流120周年記念花展を計画。小原流研究院院長、公益財団法人日本いけばな芸術協会常任理事、兵庫県いけばな協会理事、大正大学客員教授。

これからのいけばなを牽引する
若き家元の未来へつなぐ想い

「日本の伝統文化とはなんですか?」と尋ねられたとき、あなたは何を思い浮かべるだろうか。そしてあなたはその文化にきちんと向き合ってみたことがあるだろうか。若者の伝統文化離れが囁かれるなか、若年にして華道を背負って立つ新進気鋭の家元がいる。小原流五世家元である小原宏貴さんだ。

「花をいけるということは生活することと同じ」だと話す小原さん。幼少期に相次いで父(先代)と祖父(先々代)を亡くした後、若干6歳にして家元を継承した。幼少期から厳しい稽古をつけられていたと思われがちだが、決してそんなことはなかったという。「たくさんの花と器を用意され、好きなようにやりなさいと、私にいけばなの楽しさを教えてくれた先生に言われた」とその当時を笑顔で振り返る。

今や指導する立場にある小原さんだが、当時の先生の意図は今になってようやく理解できたという。「先生の受け売りではいけない」。自ら学び自ら考え、時に自ら質問することの大切さは、華道だけでなく学問などにも通ずるところがあるだろう。

小原流の魅力を率直に聞いたところ、「人と人とのつながりが強いところが魅力のひとつだ」と語った。小原流では、全国にあわせて148の支部があり、それぞれが先生と生徒との強いつながりを大切にしている。昔から文化は人と人とをつなげてきたが、コミュニケーションツールが発達した昨今でもなお、小原流は人と人をつなぐ。初代の掲げた「和の精神」に由来する小原流のDNAが、感覚として今の会員にも備わっているのも一因だと話した。

来年小原流は創流120年を迎える。初めて小原さん主導で本部の展覧会が進めており、今までの作品を見返し再構成していく作業の真っ只中だ。初代の作品の白黒写真を見て、どのような思いでこの花を選びこのようにいけたのかを想像する。小原流の真髄に触れていくこの作業には、先達がつないできた想いを次世代につないでいく意図もこめられている。

「やりたいことが多様化しているなかで、若い世代が減ってきてはいるものの、いけばなを実際にやってみることで自分の価値を高めて欲しい」と述べた。小原流では毎年学生いけばな競技会を開催しており、大阪では27回を数える。小原流のいけばなを部活単位で楽しんでいる中高生からの応募は年々増加し、10回をむかえた東京では、会場が手狭になるほど盛況だという。

「美しいものを美しいと思う気持ちは万人が共通して持っているもの。いけばなは古めかしい印象があるかもしれないが、花に実際に触れてぜひ楽しんで欲しい」と小原さんは締めくくった。  (松本菜穂子)