私たち大学生は、講義を受けたり、友達と談笑したり、時にはサークル活動をしたりすることを目的として、何気なく大学のキャンパスに通っている。しかし、周囲を注意して見てみると、そこにはさまざまな人やものが存在していることに気付く。この特集では、塾生やこの新聞を受け取ってくれたあなたにぜひ知っておいてもらいたい「慶應義塾の知られざる魅力」を余すところなく伝えている。

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暑い日差しのなか、練習の声が響く
暑い日差しのなか、練習の声が響く

充実した体育施設と二つの遺跡

三田キャンパスといえば塾歌や慶應讃歌にもうたわれる通り、丘の上にあるというイメージがある。対する日吉キャンパスの裏手には蝮谷(まむしだに)と呼ばれる広大な谷地が広がっていることをご存じだろうか。日吉駅前から続く銀杏並木を登り切った先にある日吉記念館の右手奥が蝮谷への入り口だ。

記念館裏手の急な階段を下っていくと、まずテニスコートが見えてくる。このコートでは毎年「慶應チャレンジャー」と呼ばれるテニスの国際大会が開催され、塾生をはじめとした多くの観客を集めている。蝮谷は体育の授業や各體育會の活動で使われる施設が充実している場所であり、テニスコートのほかにも洋弓場や合気道場、空手場などさまざまなスポーツ施設が並ぶ。

その一方で、木々が茂る蝮谷の奥地に、史跡が隠されているということを知る人は少ない。日吉は第二次世界大戦期に海軍の一拠点となった土地であり、日吉キャンパスの地下には現在でも当時の地下壕が残されている。キャンパスの地下に掘られた地下壕は全長2600㍍にもわたり、その入口が蝮谷体育館の奥にあるコート付近にあるのだ。戦艦大和の出撃命令や神風特攻隊への指令もここから出されたとされ、第二次世界大戦当時の様子を知る貴重な場となっている。一般公開は行われていないが、日吉台地下壕保存の会により随時見学会が行われているようだ。

また、日吉キャンパス・矢上キャンパス一帯には日吉台・矢上台遺跡群と呼ばれる遺跡が存在しており、弥生時代の住居跡が地下壕の入口よりもさらに奥に残されている。この遺跡群から出土した弥生土器は日吉キャンパス独立館1階のD101教室前に展示されており、いつでも見ることができる。

多くのスポーツ施設と歴史を感じる場所のほかにも、東海道新幹線のトンネルが通るなど、興味深い点がちりばめられている蝮谷や付近の森。多くの塾生が普段の大学生活であまり訪れない場所に、思わぬ発見があるのかもしれない。

 

(榊原里帆)