先月12日、日吉キャンパス来往舎シンポジウムスペースにて、自然科学研究教育センター主催のサイエンスカフェが開かれた。
第27回目となる今回講師を務めたのは、慶大医学部准教授の鈴木忠氏だ。これまでの研究で明らかにされてきたクマムシの生態について語った。
クマムシとは緩歩動物門の生物で、8本の脚をもち、脱皮して成長する。1200種ほど発見されており、現在でも年に数十種というペースで新種が発見されている。しかし、研究者が少なく、データが不足しているために、生態については不明な点も多い。
特にコケに棲息する種のクマムシは、身体を樽状に変え、自ら乾燥することによって無水状態を生き延びる「乾眠」と呼ばれる特性をもつほか、放射線や高圧下などの様々な極限状態に耐えることで知られる。ただし、鈴木氏は「どのようなメカニズムでこうした耐久性がもたらされているのかについては、よくわかっていない」と述べ、研究の余地が多く残されていることを伝えた。
会場には子どもからお年寄りの方まで幅広い年齢層の人々が集まり、終始和やかな雰囲気の中で進められた。顕微鏡も用意され、多くの方がクマムシの様子を実際に見て楽しんだ。
サイエンスカフェは、科学者と一般市民が飲み物を片手に気楽に語り合うもので、自然科学に対する相互理解を得ることを目的としている。