メディア・コミュニケーション研究所の公開講座が先月3日、三田キャンパス北館ホールで行われた。KDDI株式会社代表取締役会長の小野寺正氏が講師を務めた。
小野寺氏はまずこの30年間における日本の通信業界の変遷を説明した。1985年の通信自由化以降、情報通信業は売上が約3倍に伸び、2011年度の名目GDPは約8%を占めるまでになった。現在、社会の大きな流れとして情報社会が到来している。
今日の情報社会では新聞やテレビが登場し、「通信」と「マスメディア」という領域が生まれた。さらに現在、ネットの世界では、通信とマスメディアの中間的な領域も発生している。ネットの世界にみられる情報社会の本質として、個人が自ら世界の不特定多数の人に手軽に情報発信できることが特徴となる。
今後は、個人の情報発信力や社会への影響力が一層強まり、「個人の創造性が最大の価値を生む社会になることが考えられる」と小野寺氏は言う。
その原動力となるのがソーシャルメディアの普及である。例として小野寺氏が挙げたのが、アラブの春だ。アラブの春は、フェイスブックでの呼びかけがきっかけに起こったと言われている。
だが、ソーシャルメディアにも課題がある。それは若者と高齢者の情報発信力の差だ。しかしこの問題は、「今の若者が40代に中核となって情報を発信できるようになるため、過渡期の問題だろう」と小野寺氏は語った。
最後に「働き方にはいろいろな形がある」と述べた。その上で、「会社というのは時代ととともに変化する。10年、20年先に会社がどうなっているかは、経営者にも分からない。就職活動において、自分が何をしたいかが大切だろう」と学生の進路について助言した。