来年度の方針は学部ごとに決定
慶大は今年度4月より、2学期制を土台としつつ、並行して4学期制の実施が可能となる自由度の高い共通のプラットフォームとしての学事日程を導入した。一部の学部・研究科においては、4学期制に対応した授業が始まっている。各学部・研究科は今後も新たな学期制度の活用を進めつつ、総合的に教育効果の向上を目指す方針だ。次年度カリキュラムについては、今年度の成果に鑑み、検討される。(和田啓祐)

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慶大は今年4月から、理工学部、総合政策学部、環境情報学部の3学部と、政策・メディア研究科、法務研究科の2研究科において、これまでの2学期制を土台として新たに4学期制の導入を開始した。4学期制を採用することで、学びの国際化、集中化、多様化を促し、教育効果を向上させるのが狙いだ。5月をもって、すでに4学期中の1学期目が終了している。学期制度についての担当常任理事である長谷山彰教授は「現段階で特段の問題は生じていない。導入は円滑に行うことができたと思う」と振り返った。

来年度以降、他学部が4学期制を導入するかは未定である。長谷山理事は「4学期制導入の是非、その運営や内容については各学部が主体的に決める」とした。そのうえで、「実際に学ぶ学生にとってより良い履修制度となることを念頭に、必要に応じて検討していく」と述べた。

しかし、学部によって学問領域の特質上、4学期制への対応が難しいのではないかという懸念がある。例えば、SFCでは多くの科目が全学年を対象として開講されるため4学期制に対応しやすい。だが法学部などでは、学年を重ねるにつれて高度な内容を展開していく科目分野が多いため、仮に4学期制を導入しても上手く機能するとは限らない。また、そうした学部ごとの分野特性の違いから、各学部間での4学期制対応科目の数が不均一になることも考えられる。

それに対して、長谷山理事は「授業はその学問分野の特性に合った授業形態設定が前提。学部間における4学期制対応の科目数に差が出ることは重要視しない」と話した。カリキュラムの設定にあたっては、時間をかけて学ぶ必要がある分野ならば、通年制あるいは2学期制の形態をとる。逆に短期的に集中して学ぶべき分野ならば4学期制の形態を採用する。このように、場合によって学期制度を使い分けていく必要がある。

今回の学事日程改革の大きな効用として、欧米の大学のサマープログラムに参加できるようになったことが挙げられる。これらのプログラムは通常6月から開始されるため、従来の2学期制では参加が難しかった。4学期制の導入と並行して、大学は既存の留学プログラムをより発展させると同時に、新たな留学プログラムも模索し、国際的な学びの環境をさらに充実させる予定だ。

ただし「4学期制導入は、単にグローバル化に対応するというだけのことではない」と長谷山理事は念を押す。学内においてもあらゆる学習環境を用意することで、学生の多角的な視点や能力を養う方針だ。ひいてはそれが「多様な人材の創出につながる」と長谷山理事は話す。