食の安全や食育という言葉が急速に定着しつつあり、食に関する関心が高まっている。その中で、食品の廃棄に関しては、まだ一般的に理解が進んでいない。食品廃棄は日常生活では食べ残しくらいしかないが、社会全体では食べ残しを捨てるだけ、という簡単な構図ではない。

 食品産業全体からの食品廃棄物等は年間で1135万㌧発生している=表参照。その内訳を見ると、最も大きい比率の食品製造業は、495万㌧。ここは動植物性残さ(骨や皮、へた、芯など必要のない部分)が主であり、再生利用等の実施率が最も高い81%である。食品小売業と外食産業は、それぞれ年間発生量が262万㌧と304万㌧と少なくないが、再生利用等の実施率は35%、22%とあまり高くない。

 食品小売業は流通段階のものであるが、外食産業はどちらかといえば消費段階のものであり、客の食べ残しも廃棄量に含まれる。それがない食品小売業はもう少し廃棄量を減らすことはできないのだろうか。そこで学生にとって身近な食品小売業者であるコンビニエンスストアに取材を行った。

 スリーエフ広報室の金子昌司さんによると、スリーエフでは、「商品廃棄の増加は加盟店の利益を損なうため、適正発注をアシストするシステムと指導が進んでいる」という。

 1店舗での1日の廃棄量を聞くと、「1店舗当たりの廃棄量を平均化するのは難しいのですが、スリーエフでは1日でお弁当が5個、おにぎりで10個、その他約20個、約9㌔です」と返ってきた。これは容器・包装の重量も含まれ、食品自体はこれより少ない。

 そもそも、「コンビニエンスストアというのは、フランチャイズ本部と契約している個人商店、つまり、町のパン屋や八百屋、酒屋さんと変わらない」とのこと。結局は経営者の客足や売れ行きの予測によって発注が行われ、廃棄の量も変わる。

 生活リズムの多様化への対応の問題もある。常に客が求めるものを置いておくことはコンビニの使命であり、夜食を求めてコンビニに行き、欲しいものがなかったら、困ることも確かだ。

 さらに慶應生協の専務補佐、関根邦夫さんにも話を伺った。

 日吉の購買部なら、弁当を毎日700個ほど出し、廃棄は5%以下にすることが目標だという。しかし日によっては100個ほど余ってしまうこともあるという。

 コンビニの弁当と生協の弁当は非常に大きな違いがあり、生協の弁当は温かい。コンビニの弁当は急速に冷やすことで賞味期限を延ばしているが、生協の賞味期限は4時間しかない。

 また、システム面での遅れもある。POS(販売時点情報管理)システムが、発注とレジが一体化されてないため、販売予測の精度が落ちる。一体化したものは来年の10月以降に導入予定だ。

 両社ともに廃棄の削減に対し努力している。しかし、それ以上に取材中に熱心に語ってくれたのは「客が来たときに商品がないと申し訳ない、安全・安心な食品を提供したい」という考えだった。

 コンビニも生協も客の要望に沿って変化している。食の安全や利便性を優先する風潮を改めて感じた。

(金澤隼人)