ネットカフェ難民とは、アパートなどの住居を持たず、日雇いの派遣労働に従事し、24時間営業のインターネットカフェや漫画喫茶で寝泊りする人のことを指す。その実態を探るべく、大田区・JR蒲田駅周辺で張り込むこと2日。一人の男性が我々のインタビューに応じてくれた。

 本間さん(仮名)は、昭和24年生まれの58歳。現在は無職だという。まずはネットカフェ難民になった経緯を伺った。

 本間さんは四年制大学の経済学部を卒業した後、大手証券会社に入社。毎晩接待をこなす派手な日々を送っていた。30代前半で転職した保険会社では、営業マンとしてトップセールスの記録を残し、社内で表彰されるなど本間さんの人生は華やかなものだった。

 しかし上司と意見が合わず、30代後半で保険会社を退社すると、その後の人生は順風満帆にはいかなかった。不動産会社、大学受験の教材販売、パチンコ店の店長、派遣会社を通したホテルの配膳など職を転々としたが、年を重ねるととともに、パチンコ店時代からの腰痛が悪化し、就業困難となったため一時横浜市から生活保護を受けて暮らすこととなる。「ホームレスの一歩手前」(自身談)の生活を経験し、その後も何度か就職をするが先日、月給14万円・社会保険もない、建設会社で賄い料理を出す仕事を辞め、現在に至る。現在までに2回の離婚を経験。子どもはいない。

 本間さん曰く、生活保護を受けている人が、就職の面接を受けるのに必要な物が3つある。携帯電話と住所と保証人。だが保証人がいれば基本的に生活保護を受ける必要はない。ホームレスの人達は、ハローワークからの求人に応募しても、面接すら受けられないのが実情だという。仮に条件が揃ってもリクルートスーツや交通費も用意できない人も沢山いる。

 「おれなんかは氷山の一角で、雇用や貧困問題で苦しんでいる人は他にもたくさんいる。もっと現実を見て欲しい。そう思ったから話に応じた」。

 ネットカフェ難民はホームレスと同義とも言われる。深夜のネットカフェでは様々な事情を持った人間が息を潜め、静かに朝を待っている。

(大木将裕)