結婚とは何だろうか。これを読んでいる方の中には、まだ遠い未来のことで、簡単には想像できないという方もいるかも知れない。筆者の知人で「結婚したいか」との問いかけにYESと答えた塾生に対し、「ではなぜ結婚したいのか」と訊くと、大体は「信頼できる人とずっと一緒にいたい」「安心感のある落ち着いた生活をしたい」「自分を待っていてくれる人や、帰るべき場所がほしい」などといった答えが返ってくる。だがこれらの意見について考えてみると、結婚していなくても同棲したり相手を信頼したりしていれば、実現自体は可能ということである。そしてそのような関係は同棲をやめたり、相手への信頼が薄れたりすればもはや成立しなくなる。
では、実際に結婚するとはどういうことなのだろうか。
結婚すれば、それまでの両親の元で暮らしている状態から、パートナーと2人で公式に新しい家庭を持つことになる。結婚して姓が変わり、先祖代々から受け継いできた実家の姓がそこで途絶えることもある。
だが結婚とはそのような目に見える変化だけではない。新しい家庭を持つということは社会の中では2人で1組の「夫婦」という単位で見られることであり、それまでとは大きく立場が異なる。姓がひとつになるということは実家の一族を出て、相手の先祖から連綿と続いてきた枠組みの中に組み込まれ、今度は時間をかけてその枠組みを形成していく側になるということなのかも知れない。それには一生その役割の担い手として生きていくという覚悟や決意が求められ、一時の感情や欲望によって無責任にその枠組みに加わることや抜け出すことは出来ない。
また、結婚するということは一生同じパートナーと共に支えあいながら生きていくことを意味する。それまで別々に流れてきた2本の人生が、結婚という地点で合流して1本の人生となり、死ぬまで続くということだ。時には不信感を抱くことや、喧嘩になることもあるかも知れない。それでも最終的には相手を受け入れ、認め合って時間をかけ、努力して歩み寄っていく。そのプロセスが結婚生活ではないだろうか。結婚をひとつの通過点、結婚生活をその後に続く長い過程として考えてみた時、結婚や自分の人生に対する考え方も少しは変わってくるのかも知れない。
(鈴木香央里)