『オーシャンズ13』は、『オーシャンズ・シリーズ』最高の作品だった。非常におもしろい。
『オーシャンズ・シリーズ』とは、カリスマ詐欺師ダニー・オーシャンを中心とし、メカの天才やハッカー、曲芸師といった、その道のプロたちが犯罪チーム「オーシャンズ」を組み、難攻不落の財宝を鮮やかに盗む人気シリーズだ。彼らはこれまで、巨大カジノの金庫に眠る大金や、ヨーロッパの至宝を華麗に盗んできた。次なるターゲットは、ラスベガスの超高級5つ星ホテルである。
映画史に残るほど、『オーシャンズ・シリーズ』は贅沢な作品だと思う。というのも、スター俳優という贅沢な美しいダイヤをふんだんに使っている作品だからだ。ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシアなど、特にこの作品に揃う俳優はこれ以上ない大粒のダイヤ。さらに今回、「オーシャンズ」に立ちはだかるホテルオーナーを、名優アル・パチーノ、その秘書をエレン・バーキンが演じている。これまた極上ダイヤ。名優の演技も際立ち、映画はさらに華々しいものとなっている。これだけのダイヤを揃えても、監督スティーブン・ソダーバークは、個々の良さを殺すことなく、逆に引き立て、一層美しく光り輝かせている。
このシリーズは、トリック満載、手に汗握る映画ではない。そういう映画に見えるかもしれないが、実際は、リズミカルな会話やコミカルなストーリーで、不思議と気楽な空気を作り出す独特な映画だ。『11』を見たとき、このリズミカルな会話に笑わされた。しかし、『12』では色々な要素を新たに取り込もうとしたため、残念なことに、この映画ならでは良さは殺されてしまった。本作『13』では、前回とは打って変わって、全てが洗練され、光り輝いていた。リズミカルな会話は遅すぎず速すぎない絶妙なテンポ。そして、ストーリーも一層魅力的なものとなっている。アクシデントや、大きなミスも、全て笑いへと転換されていくコメディー要素たっぷりで何度も笑わされる。
見所を挙げようとするとキリがない。それくらいこの映画は見所が多い。強いて挙げるなら、アンディ・ガルシアとアル・パチーノのベテラン俳優が並ぶシーンである。2人が並ぶシーンは全編を通じてワンシーンにしか無く、それによって醸し出される緊迫感と美しさは非常に印象的だ。
一瞬たりとも気が抜けないが、だからといって気構えずに気楽に見られる。あっという間に時間が過ぎ、終わったときは清々しい気持ちで満たされる。夏の蒸し暑さに負けない爽快な映画だった。
(石山裕都)
『オーシャンズ13』
07年8月10日(金)丸の内ピカデリー1他
全国ロードショー