日本は1997年に、地球温暖化問題に関する京都会議で定められた京都議定書において、二酸化炭素など温室効果ガスを2008〜2012年にかけて6%削減することを約束した。しかし、それは1990年を基準とした量であり、実際には日本の排出量は8%増加しているため、削減すべき数値は約14%に膨れ上がっている。さらに温室効果ガスの削減目標数値を達成できなかった場合、京都議定書ではこの達成できなかった量の3割分を追加して2013年以降に減らすことを義務づけている。このような状況下で、日本は目標を達成するためにどのような対策を行っていくべきなのだろうか。この問題について、国連気候変動枠組条約京都議定書遵守委員会共同議長を務める環境情報学部の浜中裕徳教授にお話を伺った。
日本は石油ショックのなかを生き抜くために、エネルギー効率を高める技術を開発し導入するために投資したことで今では世界のトップに躍り出るエネルギー効率を手に入れた。そのため、現在では乾いた雑巾を絞るように、これ以上二酸化炭素を減らすことは困難だと言われている。
欧米に比べこれ以上の削減が困難な状況下にある日本は、他国との削減に対する難易度の不公正さを解消するために、森林が二酸化炭素を吸収する量を3・8%までは目標削減量の中に含めることを、2001年のマラケシュ会議で認められた。そこで、山の荒れた森林を政府が民間企業や国民と連携して手入れし育てることで、森林の吸収率を高める対策が、現在進行中である。また政府が、電化製品や自動車などについてトップランナー方式で定めている省エネの基準を厳しくすることで、企業の一層の技術開発努力を促す。こうした省エネ基準を十分に満たすことで、さらなる省エネの進展が予想される。
一方住宅・建築物の分野では、改善すべきことがたくさんある。壁や窓の断熱性能を高めたり、屋上の緑化を進めることで、エアコンの使い過ぎを防ぎ、地球に優しい建設を進めるということが求められる。
京都議定書では、エネルギー効率を高めるなど温室効果ガスを削減するための技術を利用して他国の削減に投資することで、そこで減らした分を自国の削減分に加えてよいことが認められている。そこで、中国などのエネルギー効率が悪いところへ日本のハイレベルな技術を投資すれば、大きな削減が期待できる。
浜中教授は「地球温暖化対策は全世界の課題であり、将来的に更なる温暖化対策が必要となってくる。これから始まる温室効果ガス削減の目標に向けて、工場、建築物や自動車についての省エネ対策だけではなく、炭素税や排出権取引の導入も必要になってくるのではないか」とコメントした。
日本は、目標を達成するためにロシアやウクライナなどの二酸化炭素削減の余り分を買うこともできるが、今地球で起こっている温暖化を目の前にして、帳尻あわせにはじめから頼るのではなく、最後まで諦めずに対策を続ける強い意志が必要なのではないか。そしてこの対策を未来へと繋いでいくことで、地球温暖化を食い止めることが人類に課せられた使命だと言っても過言ではない。
(香取了)