医学部の歴史は1917年に初代学部長・北里柴三郎が医学科予科を開設したことにより始まる。今年は医学部創立90周年、来年は塾創立150年である。
「節目の年に就任したわけで、責任の大きさを感じている」

医学部長就任に対しての感想を尋ねると、笑いながらそう答えた。だが「責任の大きさ」に臆することなく、今後の展望については真剣な表情で以下のように語ってくれた。

近年、高度先進技術の導入にもかかわらず、応用研究は長時間化し実用化のプロセスも複雑化している。現場の医療も時々刻々と変化しているが、一方で、医学部自体の仕組みは対応した改革が進んでいないのが実情だ。そうした中で塾からの支援を受けつつ、医学部内のリノベーション(刷新、改革)実現を目指して鋭意努力している。

具体的には30〜40代でのキャリア選択(キャリアパス)が許されるような、人事制度改革を立案している。医療のリスクマネージメントのための縦割り構造の管理体制も当然必要だが、一生を通して「新しいものを取り入れる」ための生涯教育システム、それを可能とする新しい大学院制度が不可欠と考える。

近年の医学部生については、「前向きに権利を主張してくれることは非常に素晴らしい」と述べた上で「一方で責任感が欠如しているように思える」と指摘した。「当たり前」であるべき倫理・行動規範の整備も視野に入れている。

好きな言葉は「照一隅者是国士(一隅照らす者、これ国士なり)」。世間からは見えないような影の功労者を敬い、尊重する気持ちを忘れてはいけない、という意味だ。

(谷田貝友貴)