パートナーへの情熱を語る
日吉キャンパスの奥。森の木々を抜けて進んだその先で、慶大体育会馬術部は活動している。
体育会の中でもなかなか知られていないであろう馬術部。その知られざる魅力に迫るため、主将の小澤和紀さん(商3)にお話を伺った。
小澤さんが馬術を始めたのは、慶應義塾高校に入学してからだ。新しいスポーツをやろうとしたとき、馬術部を見て惹かれ、動物が好きだということもあって入部したそうだ。馬術部内には、小澤さんのように高校時代や、それより前から馬術に慣れ親しんでいる人もいるが、大学に入ってから始めることも十分可能である。
田中雪子さん(法1)はその一人で、大学生になり、体育会に入って新たに一生懸命取り組めることを始めたいと思ったときに見つけたのがこの馬術部だったそうだ。「毎日がとても充実しています」と田中さんは笑顔で語ってくれた。
馬術部の練習は朝7時頃から始まり、ほぼ毎日行われている。日々の練習のほかに、大学で行われる講義の一つである体育実技(シーズンスポーツ)の講師として、一般の学生に馬術を教えたり、世田谷区にある馬事公苑などの競技場での試合準備や運営補助を行ったりしている。
試合の際には、前日に馬事公苑まで馬運車というトラックで馬を輸送する。静岡県や兵庫県まで遠征することもあるそうだ。
慶大馬術部の魅力は、「中高生と一緒に練習をしているので、世代や年齢に関係なく、和気あいあいとしているところ」だと小澤さんは語る。早慶戦のほか、他大学との交流戦も行っている。
また、医学部体育会馬術部と合同で活動しており、日吉馬場では、馬術部担当馬15頭のほかに医学部担当馬を2頭繁養している。馬術部担当馬の15頭は、「慶隼」や「慶湊」など、名前に慶の字が入っているのが特徴である。
馬も生き物なので病気などによる故障はつきものだ。「故障の際は、つきっきりで看病しなければならないので大変でした」と小澤さんは振り返る。ただ、かけた愛情に比例して馬との絆は深まっていく。自分が面倒を見てきた馬との試合で結果を残せたときの喜びは格別で、馬術部に入ってよかったと思えるそうだ。
今年の目標は「早慶戦の連覇」である。昨年は、6年ぶりに早大に勝利した。「今年もその喜びを味わえるように頑張っていきたい」と力強く小澤さんは語った。
何の分野であれ、一つのことに情熱を注ぐのは簡単なことではない。今回出会った馬術部の方々は皆それぞれ「馬への情熱」を持っていた。彼らは今日も、馬という最高のパートナーとともに練習に励んでいる。 (高畑里佳子)