大型コンピュータの萌芽期と米ソによる宇宙開発競争期に学生時代を過ごした。この背景の下で、自然現象をモデル化しコンピュータで現象の深層を予測する研究に興味をもったという。大学院生時代、欧州で学会活動を通して異文化に触れ強い刺激を受けたそうだ。

学部長2期目をむかえるに当たり、キャンパスで実施中の教育支援プログラム、博士課程COEプログラムなどを基盤カリキュラムと融合させながら教育と研究を先導してゆきたい。

そして、慶應義塾が社会から高い評価を受けている現在、次の四半世紀に向けて研究大学・大学院として存在感のある理工学部体制を築くための努力が重要だ。来年の慶應創立150年と2014年の理工学部創設75周年をそれぞれ迎えるにあたり、「学部と大学院の見直しをもとに将来像を描き改革を行う」リノベーション会議をスタートした。同時に、これを実現するキャンパス施設の整備事業を立案している。

大学院には英語で講義を行う国際コースが設置されており、海外からの学生が言葉の壁を越えて教育を受けている。さらに海外の理工系大学へのインターンシップや留学で人材の双方向化を充実し、教育グローバル化時代の基盤システムを構築してゆきたい。交流から連携フェーズへの移行を基調とし、キャンパス間の連携、国内外大学との連携を重視している。

今後の課題の一つは、入学した学生が将来のキャリアパスを意識できる環境をキャンパスにつくることである。また、情報が氾濫する現代社会にあって、必要な情報を選び出す技が求められる。このスキル作りは、「自分」という人間を創ることに値する。同時に、最先端を直接体感できる環境、そして異文化に触れ新たな発想を手に入れられる環境を作り上げて行きたい。そのためにも、海外との連携により一層力を入れていくつもりだ。

(阪本梨紗子)