読書の秋。比較的時間に余裕のある大学生ならば、本の世界に浸ろうと本屋に足を運ぶ機会が増えるのではないだろうか。
色彩豊かな芸術本が立ち並ぶ本屋、洋書の山で外国かと思わせるような雰囲気の本屋……。本屋といえども、そこは様々な想いが込められた場になっている。では塾生に最も身近であろう生協書籍部は、本屋という場を通じて何を伝えようとしているのか。生協書籍部の取り組みについて、慶應義塾生活協同組合、日吉店書籍部の上田雅晃さんに話を伺い、そこから見える慶應生協書籍部の想いを探った。
生協の目玉といえば、何と言っても「読書マラソン」。これは、本を読んでコメントを提出するというもので、大学在学中に本を100冊以上読もうという趣旨の下で行われている。自分の読書力をつけると同時に、他者に読書の楽しさを伝える仕組みになっている。この企画は全国の大学生協で実施され、今では「全国読書マラソンコメント大賞」という大会にまで発展した。
読書を身近にするという点でいえば、「おすすめの本コーナー」も挙げられる。巷の噂、メディアミックス、学生の立ち話、問い合わせなど、生協スタッフがあらゆる手段を駆使し、学生の来店動機となり得る本を紹介する。この取り組みは効果てき面。ベストセラーであるハリーポッター、数々の人気漫画、映画やドラマの原作本などを導入した結果、多くの学生が生協に訪れた。
だが、売れる本、話題の本ばかりに力を入れている訳ではない。生協側が文庫本、新書という親しみやすい本を厳選して店頭に並べることで、学問の導入的役割を担えるよう学生をサポート。そして行く行くは専門書に興味を移させ、学生のレベルを一歩先へと導く。
ただ、どんなに売れる本、読んで欲しい本が揃ったとしても、学生に伝わらなければ意味がない。あえて目に留まるよう一点集中販売、本にポップをつけるなどの「見せる工夫」、通常の10%引きに加えて長期休暇前の15%引きのような「値段の工夫」をして、より学生の手元に届くようにしている。
「文庫本の配置は、出版社と著者別どっちがいいかな」。ちょっとした雑談の合間に上田さんが言った一言。学生の要望を反映させ、生協が学生に近い存在であろうとする姿勢を実感させる言葉だった。
知識を増やすもよし、読書の楽しみに浸るもよし。本に親しむことで、学生各々の世界を広げてほしい。生協書籍部の様々な取り組みは、読書の可能性を提供しているのだろう。
まずは、秋の夜長のお供を探しに生協書籍部を訪れてみてはいかがだろうか。