パジャマを届けにバンクーバーの孤児院を訪問している井尻さん(右)と仲田さん(左)
国際的支援を自ら切り開く

国内だけに留まらず、国際的な活動に取り組む塾生たち。井尻早紀さん(政3)は仲田絵理さん(総3)などと共に、カナダやトルコの恵まれない子どもたちにパジャマを届ける「Two Girls In the Pajamasプロジェクト」を行っている。

プロジェクトを思い立ったきっかけは、幼いころに井尻さんがアルゼンチンとアメリカで生活した経験にある。先進国と後進国の子どもたちの生活の格差を感じ、その改善のために「何か助けをしたい」と思った。それはすぐに叶える事はできなかったが、その思いを常に心の中に持ち続けていた。

その後、大学2年の時にカナダへ留学し、カナダのボランティア団体は皆はっきりとした目的意識を持って活動を行っている事に驚いたと言う。そこで、自分も何か目的意識を持ってボランティアを行いたいと考えた時に、思い出したのが幼い頃の記憶だった。

一口に、恵まれない子どもたちのための企画といっても、さまざまな手段が存在する。彼女は手始めに、その時に暮らしていた街の孤児院へ足を運び、どのような支援が必要かを聞き回った。その結果辿り着いたのがパジャマを届けるという企画であった。不潔な服で寝ることは、幼い子どもにとって病気に直結する。そのため、清潔なパジャマが求められていた。

しかし、全く人脈のない海外で、資金も無い状態からボランティア活動を始めるのは簡単ではない。最初はさまざまなボランティア団体の責任者に集金方法を聞き、大学の大教室で募金箱を回す方法を教えてもらった。

実際に行うと、温かい反応をしてくれる教授もいる一方で、中には「コートを投げつけて拒否する教授もいて悲しかった」と反応はさまざまだった。その他にも自分で焼いたケーキを販売してお金を集めるなどして、100人近い子どもたちにパジャマを届ける事ができたそうだ。

この企画は、その後各企業などに自力で交渉しスポンサーに付いてもらうなど、確実に拡大している。一緒に企画を行う友人たちや、カナダ・トルコ・日本のそれぞれのガールスカウトの協力もあり、トルコの子どもたち250人にもパジャマを届けたほか、東北やカンボジアでも配布を行った。

まさに国際的な企画を自力で切り開いていった井尻さん。「それぞれが持っている社会問題に対して、それぞれの解決を目指してほしい」と訴える。  (北村成)