高校生が本気になれる「きっかけ」を創る。それを実現しているのが、NPOカタリバ(以下、カタリバ)だ。

 カタリバは、大学生世代のスタッフが、「高校生の時の自分に言ってやりたいこと」を高校生に話して回る活動をしている。現在、約3500人のキャストと呼ばれるスタッフが登録しており、年間80校ほどの高校を訪問している。

 9月16日、葛飾総合高校で学校企画「カタリ場」が行われた。「カタリ場」は、プロジェクトマネージャー(以下、PM)を中心として、各高校の課題を踏まえた上で計画され、高校の授業枠内で実施される。今回は1年生を対象とした企画で、目的は来年度の科目選択への意欲を向上させること。

 生徒が体育館に入場し活気あふれる雰囲気の中、「カタリ場」は始まった。

 生徒は、まず将来の具体例として、キャスト自らが変わった経験や今打ち込んでいることについての話を聞く。その後「自分が何に興味を持っているのか、何をしたいのか」をキャストと一緒に考え、探っていく。

 カタリバでは生徒を「受け入れる」ことを大切にしている。あるキャストは「自分と異なる考え方の生徒でも、じっくり話を聞く。また、逆に共感できる話をされても、わかったつもりにならないよう気をつけている」と話してくれた。最後に今できることをシートに書き込む頃には、キャストと生徒の距離は近づき、両者ともに満足げな表情がみられた。

 企画終了後、PMの益子泰亮さんは「今回の企画テーマはターニングポイント。この企画の始まる前と後で生徒がどこか変わってくれていたらうれしい」と語った。

 カタリバは、親・生徒といったタテの関係や友人とのヨコの関係とは異なる「ナナメの関係」を高校生に提供している。親、先生には本音が話しにくく、友人には真面目な話をしにくい。地域コミュニティが希薄化したといわれる今日、高校生と近い立場でありながら、真剣に語り合うことのできる「ナナメの関係」は貴重である。

 しかし、それは一度の企画で作られた関係であり、ずっと続くものではない。そのため、カタリバでは、生徒に事後アンケートを取って結果を先生に報告するなど、企画が生徒の今後につながるよう、引き継ぎを重視している。

 また、カタリバは、学校に授業として企画を提供するという面から、「学校に社会を運ぶ」活動をしているともいえる。保守的になりがちな学校だが、外部団体をうまく利用することが、よりよい教育につながるだろう。

 カタリバの今後の展望について、理事の稲葉隆久さんにお話を伺った。「『一人の百歩より、百人の一歩』を目指しています。企画の現場を増やし、より多くの高校生のきっかけを創りたい。カタリバがなくても『ナナメの関係』が存在する社会が理想ですから」

(西原舞)

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●今後の高校企画日程●
 10月29日都立板橋有徳高等学校、11月6日都立拝島高校。
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