2008年2月、共立薬科大学との合併で誕生した慶應義塾大学薬学部の入試が行われた。大手予備校や慶應義塾入学センターの発表によるとかなりの高倍率、激戦の入試となった。私立薬学部入試に慶大が新たな風を巻き起こしているといえる。しかし、学内の薬学部への認識はまだ低いのではないだろうか。今回は薬学部のサークル事情、今年初めて行われた芝共薬祭を通して薬学部の現状を探った。

(亀谷梨絵)

4月3日、入学式・転籍式が行われ、慶應義塾大学薬学部の歴史が正式に始まった。薬学部生は1年次を日吉キャンパスで過ごし、2年次から芝共立キャンパスに移る。

入学式の後、3日間にかけて行われた新入生向けオリエンテーション。そこには共立薬科大時代から独自にあったサークル・クラブなど19の団体も参加した。さらに薬学部団体には全体説明会をする機会も設けられた。

しかし日吉で過ごす1年生が、芝共立キャンパスに拠点を置くサークル活動に参加しているのだろうか。

実際に新入生がどの程度集まったのか。クラブ連絡会会長の橘久美子さん(薬2)は「薬学部サークルの新入生は去年と比べると、約3分の2のサークルで減少している。また、薬学部サークルに入ってもキャンパスが遠いため、サークル活動に毎回参加している1年生は少ない」と話す。やはり『日吉で過ごすうちは、日吉でサークル活動を』と考える1年生が多いようだ。各サークルの人員不足は否めない。

来年以降、サークルの新歓活動がどう変わるのか尋ねると「来年度については、1年生の入部員を集めることにも力を入れるが、どちらかというと日吉から芝共立へ移動してくる新2年生の入部員を主に集めようと考えているサークルが多いようだ」と橘さんは答えた。

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10月11、12日に慶大薬学部として初となる芝共薬祭が行われた。実行委員長は伊東敏さん(薬2)。芝共薬祭はサークルやクラスが中心となって行われる。

今年度から、三田祭、矢上祭、SFCの七夕・秋祭、芝共立祭、四谷祭の6つの学園祭実行委員会が、日程や宣伝などで協力をする公認団体「六慶祭」が組織された。それにもかかわらず、今年度の芝共薬祭は矢上祭、SFCの秋祭と期間が丸ごと重なった。これについて伊東さんは「お互いの学園祭で宣伝ができるので相乗効果を期待している。前向きに捉えている」と話した。

しかし今年度の集客状況によっては、来年度以降六慶祭主導による日程調整が重要となるであろう。

芝共薬祭は、1年生がクラスごとに必ず参加する。そのため、1年生の芝共薬実行委員は各クラスから選ばれた学生が務めている。芝共立キャンパスに不慣れな1年生が来期に実行委員長を務められるのか、現2年生が継続して実行委員長を続けていくのか。芝共薬祭には集客の問題と共に運営上の課題も残る。

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1年生と2年生以上の在校生の違いについて橘さん、伊東さんに話を聞いた。

共通して述べられたのは、「大きなキャンパス、他学部との交流もある1年生は『慶應色』に染まっているのに対して、2年生以上の上級生は縦と横のつながりを大切にしたアットホームな『共薬色』のままだ」という意見だ。
橘さんは「2年生以上は、1年生に早く薬学部独特の雰囲気に馴染んで欲しいと思っているが1年生にはその魅力が伝わっていない」とも語る。

薬学部合併後、慶大は総合大学としての立場を活かし、医・看護・薬学部との間でワークショップを行い、積極的に意見交換の場を設けている。医療に関わる3学部の連携。これは合併の1番のメリットであろう。しかし、慶大の規模の大きさが共立薬科大時代の良き伝統を壊しかねないのも事実だ。

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今回の取材を通して芝共立キャンパスにいる薬学部の上級生と1年生の間に壁がある印象を受けた。合併の真価が問われるのは、今年度入学した薬学部生が芝共立キャンパスに移ったときではないだろうか。