山崎あおいという名前をどこかで聞いたことがあるだろうか。現役の慶大生である山崎さん(環2)は札幌市出身、二十歳のシンガーソングライターだ。歌手になったきっかけや歌への思いを伺った。(長屋文太)
聴く人の思い出の中へ
中1のとき、歌手のYUI主演の映画『タイヨウのうた』を観て、主人公がギターを弾いて歌う姿に憧れた。このときからギターを弾きながらの曲作りを始めた。
中3になってオーディションに出場。これまで温めてきた曲を初めて披露した。このとき自分の音楽が人に評価されたことが自信となる。高1のときに受けた2度目のオーディションでグランプリに輝き、その後、ライブハウスでバンド活動を始めるなど活動の幅を広げた。
高校を卒業後、慶大に進学する。慶大を選んだきっかけは、自分の得意分野をアピールできるAO入試の存在を偶然知ったことだ。入学して半年後の2012年8月、アルバム「ツナガル」でデビュー。現在は、時間割をうまく調整しながら学業と歌手活動を両立させている。「大学生活はいい刺激になっている」と話す山崎さん。授業で感じたことを基に歌詞を書くこともあるそうだ。
今学期からは防災を研究する大木聖子准教授の研究会に入るなど、大学生活を充実させている。山崎さんが学生としての生活を大事にするのは、「大学生になってみないと、大学生に共感できる曲は書けない」という思いがあるからだ。
大学生だからこそ書ける歌を
山崎さんの曲はふとしたときに思い浮かんだ言葉やメロディーから生まれている。作詞をするときには自分の経験から思いついたフレーズをまず浮かべ、そこからストーリーを膨らませている。「曲を聴いたときに、思い出を蘇らせたり、自分の心の中にある気持ちに気づいたりしてくれたら嬉しい」と話す。
昔から「自分のことをわかってほしい」という気持ちを持って音楽を作ってきた。曲を聴いた人に何か強いメッセージを伝えたいということよりも、自身の気持ちを正直に歌詞に書いている。
言葉で上手く表せない気持ちがあるときはどうするのか。「難しい言葉を使えばその気持ちは表せるかもしれない。けれど、自分の知っている言葉で書かなければ伝わらないと思う」と彼女は答えた。そういうときには簡単な言葉の否定の形を重ねて、言い換えるなど、気持ちがより伝わるようにと工夫する。
そして、「自分が楽しくなるための音楽でなければ意味がない」と山崎さんは言う。寂しい気持ちを歌った曲でも、最後の一行には『歩き出す』という明るいフレーズを入れるなど、聴き終わったときに前向きな気持ちになる曲を書いていきたいそうだ。
「音楽を長く続けるためにも多くの人に曲を聴いてもらいたい」。大きなホールでライブツアーをすることが歌手としての今後の目標だ。今、曲を聴いている高校生が大人になったときに曲を聴き、青春時代を思い出すというように、「思い出の中に入り込んでいけたら」と願いを語る。
今月13日には、4枚目のシングル「恋の予感」がリリースされる。さわやかなメロディーに、恋の予感という誰もが経験する気持ちを綴った。「恋をすると誰もが難しいことを考えられなくなる。だからこそのストレートな歌詞に注目してほしい」。
大学卒業までに、「友達と海外旅行に行くなど大学生らしい遊びをしたい」と語るなど普通の大学生の一面をのぞかせる山崎さん。これまで彼女のことを知らなかった人も、一度曲を聴けば、歌声が心地よく心の中に響くだろう。