――なぜ二人でJINTOLを開発しようと思ったのか

杉本 中里とは住んでいる学生寮が同じで、たまたま地元も一緒だったんで仲良くなったんです。よく二人でトランプの必勝法とかを考えていたりしていたんです。その発展で何かゲームを作れないかってなって色々思いついたんですけど、やってもつまんなくって(笑)

中里 そのうち杉本のほうがオセロを参考にしたゲームを考えてメールをくれたんですよ。それがJINTOLの元になるアイデアだったんですけど、すごいって思ったんです。企業へこの企画を持ち込んでみようって話になったんですけど、それから杉本がグイグイ企業に持ち込みにいって、その実行力にすごく驚きました。

原案・プロデュース:杉本和希さん(法学部政治学科4年)

――企業の反応はどうでしたか

杉本 最初に企画を出しに行った企業では怒られました。なんか自分たちの持ち込む姿勢などにも問題があったみたいで…。次に別の企業に当たったんですけど、それもダメで。

――何度も断られながらも、企業に企画の持ち込みを続けた理由は何だったのですか

中里 それはもちろんこの商品に自信を持っていたからです。この商品をちゃんと評価してくれる人に出会えば絶対に通るっていう強い確信が僕の中にはありました。

杉本 自分の考えたアイデアってなかなか自分では自信が持てないじゃないですか。中里が持っていた自信は自分にも大きな自信を持たせてくれました。

――杉本さんの実行力の裏には中里さんの大きな自信が後押しがあったんですね

二人 そうですね(笑)

杉本 その後に、あの「無限プチプチ」を開発した高橋(晋平)さんに一回このアイデアを見てもらいたいと思ってメールをしたんです。そこで話を聞いてもらえることになって。高橋さんに初めて見せた時、「面白い」とは言ってもらえたんですけど、「商品化はできない」と言われて。アプリという形ではどうかとも言われたんですけど、自分たちはアナログの形で世の中に出したいと正直に語ったんです。その僕らの熱い思いを汲みとってくれて、高橋さんが「それなら一回上司に打診してみよう」と言ってくれて。そこから、バンダイで商品化してみようってことになりました。

――最初の企画とどういう点が大きく変わっていったのか

杉本 まずは名前。最初は「重ねる」っていうところからミルフィーユって名前にしていたんですけど、もう一回考え直せって言われて。
中里 高橋さんには名前の案を100個考えてこいって言われたね(笑) その中の一つがJINTOLで、高橋さんにチョイスしてもらいました。
理論解析:中里龍さん(理工学部数理科学科3年)

――中里さんが手掛けた理論解析とはどういうものなのか

中里 簡単にいえばこのゲームはきちんと勝負がつくものなのかを解析していました。進行のパターンがどれぐらいあるのかを調べて、平等性が保てるのかなど調べていました。そういう部分が証明できていないと、ゲームを商品化することなんてできませんし。

――開発に至るまでに苦しかったことは

杉本 やはり持ち込みがなかなかうまくいかなかったことです。社会の厳しさとかも実感しましたし。協力者を見つけるのはとてもたいへんなことで、本当に高橋さんには感謝をしています。

中里 実は高橋さんは販売直前に部署移動となってしまって、最後まで一緒に仕事ができんかったんですよね。それが寂しかったです。
――高橋さんからはどのようなアドバイスを受けていたのか

中里 どうすれば商品として成立するゲームになるのかについて、たくさんアドバイスをもらえました。やはり僕らは市場の需要などまでは考えていなかったので。アイテムカードを導入してみたらどうかというのも高橋さんが考えてくれたんですよ。でもアイテムカードを使った際のゲームの進行がどうなるかの理論を調べるのは、とてもたいへんでした。

――実際に商品が完成した時の感想は

中里 単純に嬉しかったですね。これでちゃんと僕らのやってきたことが評価されたと思うと。

杉本 ずっと商品を眺めてニヤニヤしてました(笑)。その後にこの販売にあたって、東急ハンズで実演スタッフのバイトをさせてもらったんですけど、初めて売れた瞬間が無茶苦茶嬉しくて。見ず知らずの誰かが自分の作ったおもちゃを遊んで楽しいと買ってくれて。自分たちの頑張りがすごく報われた気がしました。

――相方の存在はどうだったか

中里 僕の意見を聞いて真剣に考えてくれて、それに対して手加減なしに返してきてくれる。そういう意味で信頼は大きかった。

杉本 お互いにぶつかり合うこともたくさんあったね。

――開発者視点としてのJINTOLの注目ポイントとは

杉本 短時間で勝負はつくんだけど、飽きないから何度もできうなゲーム。ルールも簡単なので老若男女関わらず誰でも楽しめるゲームになっています。

中里 シンプルで戦略性もあるので、いろんな作戦の取り方とか個人の性格の違いによって戦い方も分かれるので、色んな人と対戦する時に自分でもさまざまな作戦を考えるのがとても楽しいです。

――慶應塾生新聞の読者に向けて一言お願いします

二人 まずは多くの人に実際に手に取ってもらってほしいです。JINTOLで遊んでみて、楽しいと思ってもらえたら本当に嬉しいです。
(聞き手・小林知弘)