参加した学生たちと積極的な議論を交わすアーミテージ氏
先月30日に「アーミテージ&キャンベル白熱討論」が慶大三田キャンパスで開かれた。領土問題や歴史認識問題で緊張関係が続く北東アジアの情勢を踏まえ、日本が取るべき立場、最大の同盟国であるアメリカとの関わり方を考察。アーミテージ、キャンベルの両氏ともに700名を超える学生らと熱い議論を交わした。(安田麻里子)

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アーミテージ氏「世界平和に日本の協力が必要」

アーミテージ&キャンベル白熱討論「アジア新世代~問われる日米の絆~」が、先月30日三田キャンパス西校舎ホールで開かれた。

今回は学生応援プロジェクトの一環として日本経済新聞社と慶大グローバルセキュリティ研究所が共同で開催した。元米国務副長官のリチャード・アーミテージ氏とハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏を迎えて早大の大隈講堂にて開かれた「アーミテージ&ナイ白熱討論」に続き2回目となる。

今回の討論会には昨年と同様アーミテージ氏を招き、当初参加予定だった前米国務次官補のカート・キャンベル氏は都合によりビデオで意見を伝えた。当日は学生らを中心とした700名の参加者と共に意見を交換し合った。

講演は冒頭にグローバルセキュリティ研究所所長の竹中平蔵氏、昨年の討論会に登壇したジョセフ・ナイ氏のビデオメッセージが映されて始まった。第一部ではアーミテージ氏と、モデレーターとして日本経済新聞社の春原剛氏が登壇。尖閣諸島をめぐる日中問題や従軍慰安婦に代表される日韓間の歴史認識問題、集団的自衛権の行使などに関して、春原氏が来場者に問いを投げかけた。それに対して参加者は賛否を表明し両氏がそれぞれ見解を述べる形で進められた。

尖閣諸島や北方領土などの領土問題に対してアーミテージ氏は「アメリカは特定の立場をとらない」としたうえで、「日本自身が判断することでありアメリカはそれを支持する」と述べた。事前のアンケートや当日の会場の様子では若者の集団的自衛権に対する慎重な姿勢が見受けられた。

その一方で主要国としての責任として集団的自衛権の行使は必要だという声も聞かれた。両氏ともに、このような認識については歓迎すべきことで、日本はグローバルな国であり他国と連携して平和を維持することは自然なことであると見解を示した。

そのうえでアーミテージ氏は、国民に対して日本政府がきちんと説明しなければならないと付け加えた。また、キャンベル氏は国家安全保障会議(日本版NSC)設置に対しても言及。福島の原発事故での政府の対応の遅さを指摘し、首相が変わっても揺るがない体制と多元的危機に対応できる能力の必要性を説いた。

続く第二部では、学生を中心とした来場者たちの質問にアーミテージ氏が直接答える討論形式で進められた。現在の東南アジアの情勢をはじめ、オバマ政権や安倍政権に関することなど学生から幅広い質問に対して回答した。

ここでも集団的自衛権の行使に関する質問が再び挙がった。アーミテージ氏は日本が行使しなくても日米の同盟関係は続くと断言したうえで、常に変化している世界の平和維持における日本の協力の必要性を再び強調した。

討論の最後でキャンベル氏は、「若い世代を支援できる機会を得られたことに感謝するとし、日米関係がさらに密接になり、両国が平和を甘受できることを願う」と述べた。アーミテージ氏は来場した学生らに対し「日本の未来はみなさんにかかっている。日本社会はそんな若者にもっと信頼をよせるべきだ」と激励して討論を締めくくった。