先日の参院選でインターネット選挙運動、いわゆるネット選挙が解禁された。安倍首相が「投票率の向上につながる」と発言したように、投票率の低い若者の政治参加が期待されたが、結果は52・61%と戦後3番目の低さだった。期待とは裏腹の結果になってしまった理由はどこにあるのか。明治大学情報コミュニケーション学部准教授の清原聖子氏にお話を伺った。
まず、ネット選挙が投票率上昇につながるという見方に対し、清原准教授は「投票率が上がるかどうかはネット選挙と直接の関係はない」と指摘する。ネット選挙が解禁されたことで、有権者が情報を得やすくなったというメリットは確かにあった。しかし投票に関する時間的コストが下がったわけではないので、投票率上昇につながるというメディアの見方は誤っていたという。過度な期待が先行してしまったというわけだ。
今回の参院選で有権者は立候補者とのネットを通じての対話など双方向な使い方を期待していた。だが候補者はツイッターでは演説の日程をツイートするにとどまるなど、有権者の求めていた情報と公開された情報のミスマッチが起こった。他の試みとして、各政党はゆるキャラを作ったり、ゲームアプリを作ったりと堅いイメージを払しょくしようと努めていたことが今回の選挙の特徴だった。
また現在の日本の選挙は候補者よりも政党が主体となっているため、ネットでの選挙活動も個人での動きはあまり見受けられなかった。ただ今後社会状況の変化により、候補者主体になる可能性もあるという。
冒頭部分で、近年の日本の投票率の低さに触れたが、この問題について清原准教授は「気にしすぎな面もある。それよりも有権者が政策などをきちんと理解して投票することの方が大事だ」と述べる。
中でも若者の投票率の低さが問題となっているが、原因は若者よりも高齢者視点で政策が考えられていることが挙げられる。例えばアメリカでは教育ローンの問題など若者に直接関係のある政策があるが、日本では当事者意識が芽生えるような課題は少ない。そういった事情も影響していると言えるだろう。
これからは選挙の情報収集の主体がネットになることで、情報の偏りが予想される。その点については、日本で一番多く見られているニュースサイトであるヤフーが「どこにも偏らず中立的でいたい」という趣旨のコメントをしており、心配は少ないようだ。大きな政党を扱いがちな新聞に比べ、ニュースサイトでは小さい政党の記事も読めることが魅力的だ。もしネットで虚偽の情報が流れたとしても、「既存のメディアがしっかり検証すれば問題ない」という。
使い方によっては多くの票を得るきっかけとなり得るネット選挙。次回以降の選挙でも注目したい。 (矢野将行)