日々奮闘する女芸人
「嘘みたいだろ、死んでるんだぜ」。こちらお嬢様言葉に直しますと「偽りのようでしょ、昇天されましたの」。
アニメのセリフをお嬢様言葉に直した文字が書かれたフリップをめくると、会場は笑いに包まれる。披露するのは、昨年の一人話芸日本一を決めるR-1グランプリで準決勝まで進んだ、総合政策学部2年のたかまつななさんだ。学業とアルバイトと芸人生活を掛け持つ忙しい毎日を送っている。
芸人を目指したのは小学生時代に子供新聞の記者をしていたことがきっかけだ。登山家である野口健さん主催の富士山清掃ボランティアに参加した際、社会・環境問題に関心を抱いた。だが、記者として環境問題を扱った記事を書くも、「反応してくれるのは保護者ばかり」。本当に伝えたい相手に内容を伝えることができないと実感した。そんな時、中学三年の英語スピーチでお笑いをやってみると、いつもは寝てしまう生徒が反応してくれる。そこで、お笑いの可能性を実感した。同世代の人たちに社会・環境問題をお笑いで伝えることができないか、と思い芸人の道に進んだ。
慶大の入試では与えられたプレゼン時間でネタを行った。大学入試をお笑いで突破しようとする自分に疑問を持つこともあった。しかし面接官に「自分の得意なコミュニケーションツールを使うのは良いことだ。もっと自信をもった方が良い」と言われ、慶大に入ることを決めたそうだ。
4月にはサンミュージックと契約し、単独ライブも開けるようになった。しかし、困難に当たることも。社会問題というテーマとお笑いをむすびつけるのは容易ではなかった。3.11後に原発関連のネタを披露すると観客や主催者から怒声を浴びせられた。「短いネタの時間で社会問題を入れようとするのは難しい。うけることだけを追求しようとすると、やりたいネタができない」と悩みを抱えながら、今も試行錯誤している最中だ。
尊敬する人は爆笑問題の太田光さんだ。型破りで自由な発想を持ち、その上で影響力がある。それにより、以前まで知られていなかったことを多くの人に知ってもらえることができる。たかまつさんが目指すのはそうした芸人だ。
今秋には日吉キャンパスでライブを開催予定だ。今後の彼女の活躍を期待したい。 (在間理樹)