5月になり大学生活にもそろそろ慣れてきたので、何か役に立ちそうな資格が取りたいです。いいものがあったら教えてください。(経1女)
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「そんな意識高いこと言えるのも今のうちですよ。あと1カ月もすれば、1限に出るのが命がけになるはず。それに資格なんて取る意味ないですよ」と自作の歴代キャンパスアイドル写真集を眺めながら所員Y(法2)が吐き捨てる。所長K(理3)は両手で耳をふさぎながら、「あーごめん、何も聞こえなかったわ。なんでも良いから、とりあえず資格とってきて!」と無慈悲にもYを調査へと駆り出した。
「資格といってもピンからキリまでいろいろあるよな…。あんまり勉強しないで取りたいよね、コスパ重視で」とパソコンでユー〇ャンのサイトを見ながらつぶやく怠惰なY。内部生である彼が勉強で本気を出したのは中3が最後だった。日本さかな検定、チーズ検定、定年力検定、ウルトラマン検定……。さまざまな資格がずらりと並ぶ。「さか〇クンには別になりたくない。ウルトラマンティガとコスモス、ダイナは好きだけど、それ以外は知らないし」。これといった資格は見当たらない。そんな中、Yの心を揺さぶる魅力的な資格が目に留まった。それは、カッパ捕獲許可証というもの。これさえあれば、岩手県遠野市に住むカッパの捕獲ができるという代物だ。そして無試験で、200円を払えば誰でも手に入る。
早速、手に入れた捕獲許可証を部室で見せびらかすY。
「これでカッパ捕り放題だぜ!生け捕りにして岩手のテレビ局に持って行けば1000万円もらえるらしいよん。将来性もあるね」。有頂天なYとは対照的に、他の所員の反応はいまひとつだ。「あいつ頭大丈夫かな?」「とりあえずスマブラやろうぜ!」「武蔵家行かね?」などと勝手なことを言い出す始末。ざわざわした空気の中、「勉強したくないからって、そういうネタ系に走るのってどうなんですか?どうせ調査するならTOEIC満点ぐらい取ってくださいよ!」という所員A(文1)の手厳しい一言が。1女に叱られた恥ずかしさからYはそそくさと部室を後にしたが、「しょうがない、いっちょやるか」と目の色が変わった。来る日も来る日も勉強。そう、すべてはAに「Y先輩すごい!」と言ってほしい下心から。
TOEICの勉強を優先するため、ほとんどの授業を切って早1カ月。そんなYはキャンパスの中庭で偶然クラスの友達にばったり会った。
「おまえ最近全然見ないな。ちなみにチャイ語の授業、3回休んだ時点で単位来ないからね」「えっ…」
語学の単位にさよならバイバイ。5月にして来日が確定。脳内に流れる音楽は小田和正の「言葉にできない」。そしてYの頬には一筋の涙が…。 (YA☆NO)