慶大大学院文学研究科教授。1970年慶大文学部哲学科から大学院文学研究科哲学専攻に進み、1976年に博士課程を単位取得退学。翌1977年から慶大文学部助手に。その後同助教授、同教授を経て、2001年から現職に。2005年から2011年は通信教育部長も務めた。主な研究内容は科学哲学。

科学哲学の研究者として慶應義塾で教鞭を執られた文学部の西脇与作教授が、今年度3月31日をもって定年退職を迎えるということで、教授にインタビューを行った。西脇教授の研究室はたくさんの本で囲まれており、科学哲学で頻繁に研究対象となるダーウィンの肖像画も飾られていた。そうした愛着ある研究室で、今の心境や教授生活についてのお話をお聞きした。

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――定年を迎えた今のお気持ちは。
かなりほっとした気持ちと寂しい気持ちがある。退職することで自分の居場所が無くなってしまうという思いがあるが、塾内の仕事から解放され、無事に終わったことに安堵している。しばらくはゆっくり休みたいです。

 

――科学哲学の道に進んだきっかけは。
自分は文学少年でいろいろな本を読んでいた。高校生のころはサルトルなどの哲学者の翻訳本が出版され、それらに接する機会ができた。それが哲学の道に進んだきっかけになったと思う。高校時代に周囲の人に哲学の道に進みたいと話したら猛反対されたが、わがままを通して文学部に入学した。その時点から将来は研究者しかないとなんとなく思っていた。

 

――科学哲学とはどういった学問なのか。
科学哲学で最も話題にされるのは量子力学だろう。量子力学は反例の無い完璧な理論と言われているが、その理論が世界について何を述べているか考えてみると、分からない部分だらけである。このように科学が持つ問題を考える学問が科学哲学である。誰もが知っているダーウィンの進化論や心身二元論も研究の対象になっている。

 

――初めて教壇に立った時を振り返って。
一週間前から緊張していた。というのも、大学で授業を行う際は教員免許など必要ないから、人に教える訓練など全くなかった。だから、自分が受けてきた先生の授業を参考にするしかなく、自分の色が出せるようになったのは約五年後、授業内容と授業効率に自信を持てるようになったのは十年後くらいだった気がする。

 

――今後のご予定は。
科学哲学は研究室が無くても学べる学問だから、今後も科学哲学に親しむ機会はあると思う。あと、昔からジョギングをよくやっていたので、時間が作れたら、少し真剣にやってみようかと考えている。

 

――塾生へのメッセージをお願いします。
慶應生は、年々大人しくなっている気がする。だからもっと個性をだしてほしい。どんなことでも良いから、誰にも負けないものを自分の中につくってほしい。それが人を惹きつける魅力になると思う。

 

――ありがとうございました。

(樫村拓真)