慶大では多くの学生が外国語を2つ学ぶことになっており、履修する外国語を入学前に選ぶ必要がある。1つ目として英語を履修する場合がほとんどだが、まだ学習したことのない第二外国語をどのような基準で選べばよいのか。慶大外国語教育研究センター所長である境一三教授にお話を伺った。
まず外国語を学ぶ際には内発的動機と外発的動機がある。前者はその言語の文化圏や社会への興味など。後者は職業に役立てたり、試験で良い点を取ったりしたいという動機を指す。境教授は「学習が長続きするのは内発的動機である」と述べる。とくに内発的動機のなかでも、対象の文化圏を自分のものにしたいという気持ちを指す統合的動機が学習するうえで重要である。
自分の興味を言語学習につなげよう
それを踏まえて境教授は、自分がどの外国文化や社会に興味があるのか、大学に入って何を勉強したいかを考えることを勧める。たとえば環境問題に興味があるなららドイツ語を学ぶというように、言語の学習が卒論までの関心とリンクするのが理想だ。だが実際には入学前に先のことを見据えるのは難しい。そのため「映画でも歌でも思想家でも何でもよいから、面白いと思うことを探す。具体的に言語が使われている状況を考え、自分がそれに関心があるか振り返るべき」と境教授はアドバイスする。
また、言語の響きが好きかどうかも大きな動機となる。音が好きだったりかっこいいと感じたりすれば、その言語に愛着がわく。人によっては発音の難しそうな言語を敬遠する人もいるだろうが、だからこそチャレンジする意義があるという。なぜなら、出せなかった音が出せるようになると快感が得られ、脳の活性化や身体性の拡張につながるからだ。
日本人は、日本語を話すのに合わせた骨格や筋肉の動かし方を身につけてきた。そこで新たな言語を喋ることで、新たな筋肉の動かし方に気づくことができる。その言語圏の人々がどのように身体を動かしているか知ることで、文字を読むときにもその文化圏で育った作者の息遣いを感じることができるようになる。
さらに外国語を学ぶにあたって、自律学習者になることが大切である。自律学習者とは、自分で学ぶ力を身につけることで一生涯学ぶことを楽しめる人のことだ。だから私たちは自分に最も合っている学習法を大学で見つける必要があり、学習に意識的になることが求められる。
そのためにまずは4年後に何ができていたいのか目標を立てる。次に学び方を選択し、それを実行する。学期ごとに、何ができて何ができなかったかを振り返り、自分に必要な授業を探す。計画を修正したら、また学ぶ。このサイクルを繰り返し、1年ごとに目標を立てなおす。
境教授は、言語学習について「とにかく面白がることが大事。たとえ外発的動機で選んだとしても、何か面白いものを探して内発的動機に変えてほしい」と話した。 (長屋文太)