慶大保険管理センター 井ノ口氏

去年から今年にかけて過去10年間で2番目に多い被害が報告されているノロウイルス。感染すると数日間下痢や嘔吐、発熱の症状に襲われることで有名だ。ノロウイルスの特徴や予防法について、慶大保健管理センターの井ノ口美香子氏にお話を伺った。
ノロウイルスは主にウイルスがついた食品を食べることで感染する。時に、吐しゃ物から舞い上がったウイルスを吸引することが原因となることもある。
今年の大流行の原因は「ノロウイルスの、微量でも感染する感染力の強さや、変異を繰り返すため対応が取りにくいという特徴が関係している」という。また近年、ノロウイルスの知名度や診断法が向上し、これまでお腹の風邪とされていた症状がノロウイルスとして診断され報告されるようになったことも状況を助長している可能性があるとも話す。
ノロウイルス自体は重い感染症ではなく、感染から直接的に死に至ることなどはない。しかし、下痢を繰り返すことで脱水症状を起こすことや、高齢者では吐しゃ物を喉に詰まらせて窒息するなどの死亡例があるという。

日頃から手洗いの心掛けを

予防法としては、石けんを用いた手洗いを入念に行うことと、加熱が不十分な食品の摂取を控えることだという。石けん自体に殺菌する効果はないが、手の油と一緒にウイルスが落ちやすくなるという。また、アルコール消毒は効果がなく、トイレの後や食品の取り扱いの前には特に手洗いを心がけることが重要だ。吐しゃ物を処理する場合、マスクと使い捨てのエプロンやガウンを用意し、舞い上がらないようにして入念に拭き取り、塩素系の薬品で消毒してから吐しゃ物を密閉して捨てる必要がある。
ただ、ノロウイルスにかかったからといって、すぐ病院へ行く必要はない。直接的に治すことができる薬はないため、免疫力の低い子供や高齢者でなければ、安静にして水分やスポーツドリンクを多く摂り、体力をつければ「症状は2日ほどで治まる」そうだ。
ノロウイルス流行のピークは11月から3月。せっかくの春休みをトイレで過ごさないために、日頃の予防を入念に行おう。        (在間理樹)