学校英語教育も問い直し
慶應義塾大学言語文化研究所教授の大津由紀雄氏による中締め講義が先月12日と26日の2日間にかけて行われた。大津氏は今年の3月をもって、慶大学定年退職し、所属先を変えて研究、及び教育活動を継続していく。よって今回の最終講義を「中締め講義」と名付け、エピソードを交えながら自身の言語研究、教育を振り返り、慶大における研究・教育活動の終止符を打った。
第1回講義(言語教育編)は、三田キャンパス北館ホールで行われた。言語教育の目的は子供達の言葉への関心や興味、感知力の育成、母語の運用能力の向上であるとし、学校英語教育に対する当面の課題を打ち立てた。母語を通して効率的に英語の構造や機能を理解させることが望ましいとした上で、特に英語の運用能力を向上させるために小学校で英語を教科として扱おうとする社会風潮を批判。大津氏は「社会や企業の求める英語力の育成だけに焦点を当て、小学校における英語の教科化を進めていくのはあまりにも単純であり、その根本的な解決にはならない」と述べた。
第2回講義(認知科学編)は、三田キャンパス東館G-SECLabで行われ、認知科学の視点から現在の言語獲得理論の状況を確認した。質疑応答の際には、多数の参加者からの質問に対して実践面におけるアドバイスなども教授した。
また両講義ともに講師や院生など、全国の大学から討論者が集められ、「大津言語論を斬る」をテーマとしたシンポジウムが開かれた。指定討論者からぶつけられた疑問や批判に対して大津氏が応答していくという形で、今後の言語研究における課題を明確にしていった。
最後に大津氏は謝辞と共に、「これからもこういった機会を継続し、ことばに対する我々の理解を深めていきたい」と今後の研究への貢献を誓い、講義を締めくくった。